大阪の国立国際美術館、集大成の展覧会

2018.1.30 07:00

笹本晃のパフォーマンス《Yield Point(降伏点)》の様子。パフォーマンスは3月にもおこなわれる

(写真5枚)

「国立国際美術館」(大阪市北区)で、開館40周年を記念した特別展『トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために』が1月21日からスタート。地下2階、3階の展示室のみならず、全館で展示をおこなう大規模な展覧会となっている。

同館の歴史を踏まえておこなわれる本展のテーマは、40年にわたる活動の「蓄積」と、美術館という施設の「これから」。具体的には、収蔵品から精選した現代美術の優品と、国内外で活躍している作家の今現在の仕事を紹介しています。作品は、絵画や彫刻のほか、写真、映像、音の作品を多数セレクトしており、会期を通じておこなうパフォーマンス作品や、観客が参加できるパフォーマンス作品など、従来の美術館活動では難しかった分野にも果敢に取り組んでいます。

高松次郎《影》 1977年 国立国際美術館蔵 ピピロッティ・リスト《やわらかな受け入れへの地下(Basement to Mildness)》2018年 高松次郎《影》へのプロジェクションによるヴィデオ・インスタレーション(サイレント、15分20秒ループ) Courtesy of the artist and Luhring Augustine and Hauser & Wirth

ピピロッティ・リストの映像作品《やわらかな受け入れへの地下(Basement to Mildness)》は、本展のために制作したコミッションワーク(委嘱作品)です。同作は高松次郎の絵画作品《影》(1977年、国立国際美術館蔵)の上に投影されており、時空を超えたコラボレーションの様相を呈しています。

ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー《大阪シンフォニー》 2018年 Courtesy the artists, Gallery Koyanagi, Tokyo and Luhring Augustine, New York

ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーの《大阪シンフォニー》も本展のための新作で、大阪で採集した音を素材にしたインスタレーションです。観客はスマホとヘッドフォンを装着して細長い空間を歩き、様々に移り変わる音を楽しみながら、大阪の街を知覚していきます。

ロバート・ラウシェンバーグ《至点》 1968年 国立国際美術館蔵

また、ロバート・ラウシェンバーグの《至点》(1968年)は、5枚の自動ドアに版画作品のアクリルパネルを施した大作です。観客がドアを通り抜けることにより、次々と変化するイメージを体験できますが、長らく機械の脆弱性に悩まされてきました。しかし今回、大規模な修復によりその問題が解決。作品本来の魅力を体験できるようになったのです(1/27より、作品内での鑑賞は整理券制に。整理券がなくても周囲から作品の鑑賞はできる。また、作品内での鑑賞は都合により案内できない場合もあります)。

本展を通して分かるのは、「美」は固定化したものではなく、常に更新・拡張されていくということです。20世紀以降の美術家たちが取り組んできたその営みを、ぜひ自身の五感で体験してください。なお、本展の全作品を見届けようと思ったら、一日がかりでも無理かもしれません。最初にざっと会場を一周して、気になった作品から見ることをおすすめします。また本展の会場には解説文が設置されていません。音声ガイドと作品リスト(紙)の利用をおすすめします。期間は5月6日まで、一般1200円。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために』

期間:2018年1月21日(日)~5月6日(日)※月曜休(2/12・4/30開館、2/13休館)
時間:10:00~17:00(金土曜~20:00) 
会場:国立国際美術館(大阪市北区中之島4-2-55)
料金:一般1200円、大学生800円、高校生以下・18歳未満無料
電話:06-6447-4680

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