女優・松嶋菜々子「計算するお芝居、勉強になりました」

2018.1.26 21:00

映画『祈りの幕が下りる時』に出演する女優・松嶋菜々子

(写真5枚)

「演技者としてはやり甲斐もありました」(松嶋菜々子)

──加賀恭一郎ではなく、俳優・阿部寛さんはどうでしたか?

テレビドラマ『下町ロケット』なども観ていたので、熱さのなかにユーモアをにじませることがナチュラルにできる俳優さんだなと。それはきっと役柄でそうするというよりは、阿部さんご本人がそういう資質をお持ちなのだろうと想像していたのですが、その通りでした。お話ししていても、真面目に話されていると思っていたらちょっと間を外されたり楽しい方でした。

ただ、今回の私の役柄が、物語の要所要所に出てきて恭一郎と対峙する役だったので、この現場では阿部さんと世間話をする感じまでにはあまりなれなかったんです。なので、またいつの日か共演して、今度はもっと親しくお話しできたらと思っています。

──整いすぎているようなあの容姿で、あの身長で、ちょっとお茶目なところをみせられたりしたら、それは魅力的ですよね。

キュートですよね。加賀恭一郎というキャラクターも、優れた観察力や洞察力など刑事としては天才的だけれども、人間としては、買い物や食事をしようとしてお店の前に並ぶと、いつも必ず直前で売り切れてしまう、そんな「持ってない人」なんですよね(笑)。そういうギャップが、阿部さんご本人とも重なる部分があるように感じました。だから、ご自身に合った、いい役を得ておられたのだなと思います。

映画『祈りの幕が下りる時』のワンシーン © 2018映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

──確かにそうですね。では、松嶋さんが演じられた浅居博美という人物についてはどうお考えですか?

ミステリーなので、映画をご覧いただく前には語ることができない部分も多いのですが、博美の過去は壮絶で、それは誰にも想像しえないぐらいのものだと思います。なので、博美を演じる上で、正解といえるものはないんですよね。自身で作り上げていくしかない。家族との関係も複雑で、そこには愛情と憎悪、そのどちらも究極といえるほどのものを抱えている。

それでいて彼女自身はとても真っ直ぐな性格なので、愛も憎しみもストレートに行動に移す。また、そこにはとても強い意志もあって、愛する人のためになら、周囲からどんな誹り(そしり)を受けることも恐れない。私が演じる上で指針としたのは彼女のそういった面でした。

──この物語は、犯人はだれかというミステリーではあるのだけれど、犯罪とその解明を通して浮かび上がってくるのは家族の情愛です。

そうなんです。さらにそれが、博美だけでなく、事件を追う側の恭一郎にもそのままリンクして、彼の家族への愛情や確執まで見えてくる。恭一郎がこの事件にどう関わってそうなっていくのか。その流れをぜひ観ていただきたいです。そして、映画の最後には家族へのあたたかい思いが残る。そんな作品になっていると思います。

──ミステリーでありながら最後にあたたかい思いを残すというのは、やはり稀有な作品ですね。

それがヒューマン・ミステリーである「新参者」シリーズ最大の特徴ではないでしょうか。

「最後には家族へのあたたかい思いが残る」作品になったと松嶋菜々子

──博美を演じる上で、なにか留意した点はありますか?

先ほども言いましたが、博美の出演シーンは多くなく、物語の要所要所に出てきて、その度に話を展開させていくんですね。なので、1回1回のシーンの意味を大切にしました。ここでの彼女は怪しいと思わせるのか、ここでは潔白の印象を強めるのか、といったことですね。

出演シーンの合い間も数分間あり、その間、観てくださっている方は、前のシーンの博美の印象を持って観守ってくださっているので、次に登場するまで、どんな印象を残せるのか、物語の進行にあわせて考えて演じました。

──なるほど。それはこういう役柄ならではのことですね。

そうなんです。主演の場合はずっと出ずっぱりで、役柄の印象も少しずつ積み重ねていく作業になるのですが、この作品は1シーンごとの表現で、どういう印象をどの程度持っていただくかを計算していくお芝居でした。難しかったですが、演技者としてはやり甲斐もあって、自分の幅を広げる意味でもすごく勉強になりました。

映画『祈りの幕が下りる時』

2018年1月27日(土)公開
監督:福澤克雄
出演:阿部寛、松嶋菜々子、溝端淳平、田中麗奈、山崎努、ほか
配給:東宝

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