白石和彌監督「アイドルでアングラ映画」

2018.2.20 19:00
(写真5枚)

「あのシーンをやるだけのために作ったようなもん」(白石監督)

──やっぱり彼女がNGT48だってことは関係してるんですね。

最初に企画をもらったときはまだAKB48だったんですが、「じゃあ始めようか」となったときにNGT48に移籍という話になりました。結構時間はかかりましたが、その時間も重要だったなと思います。

──若松映画って、だだっ広いところでロケーションしながらも観念的には密室であるというのがひとつの特徴ですものね。

今回、それは踏襲していますね。でも、若松さんの映画というのは、あくまでもアングラな人たちでアングラな映画を作る、じゃないですか。そこを、トップアイドルを使って、今なかなか作ることができないアングラ映画をやったらどうだろうか、という裏テーマがあります。全裸は無理ですが、ひとつの実験ですね。だから必然的に雪国へ行った瞬間に逃げるシーンを作って、もちろん安全な範囲内でですが、できるだけ酷いことをしようと思いましたけどね(笑)。

拉致される中学校教師・藤井赤理(北原里英) © 2018「サニー 32」製作委員会

──それにしても北原さん、頑張ってますよねぇ。身体張ってるってだけじゃなく、1本の映画のなかでとんでもなく変化もするし。

頑張ってますよ。歴代の僕の映画でもこんなに肉体的に頑張った人いないんじゃないかな?

──素っ裸にするのは無理、って言われていましたけど、ある意味近いところまでいってますもんね。

そうですね。秋元(康)さんは「脱ぐくらいの覚悟は持ってると思うよ」と言ってましたけど(笑)。そのぐらいの覚悟でやらせますから、という意味だとは思いますが。「白石さんの世界観でやってくれれば・・・」みたいな感じでしたね。横から口出しされるとかはまったくなく、完全にお任せでした。

──途中、覚醒した彼女があんまりスゴいことを言うからビビりましたよ。ギャンブル依存症の女性に「ミサイルがどうの・・・」とか(笑)。

怒られたら変えたらいいかと言っていたんですが、それが全然大丈夫でした。

──話はちょっと戻りますが、「密室」というと、髙橋さんの監督作『ある朝スウプは』(2003年)も密室の映画でした。しかも、新興宗教まで絡んでたし。監督のデビュー作『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(2010年)やWOWOWドラマ『人間昆虫記』(2011年)でも髙橋さんとは組まれてましたけど、いつからお知り合いなんですか?

僕が「助監督辞めてそろそろ監督になりたい!」というときに、「IMJエンタテインメント」という制作会社の社長に「じゃぁ、うちに来て企画開発してよ」と言われて、2年間くらいお世話になってたんですね。今は「C&Iエンタテインメント」と改称していますが、原作読んで、感想言って、プロット書いて、映画観てきますって、それで給料をもらっていた奇跡の2年間がありました(笑)。髙橋くんはその会社のエージェントで、馬が合って仕事するようになりました。

脚本家・髙橋泉について語る白石和彌監督

──でも、髙橋さんとしても久しぶりに「これぞ髙橋泉」という内容ですよねぇ。脚本家としては、最近もっぱら青春映画がメインですから。僕は今もまだ「群青いろ」(註:廣末哲万とともに結成した映像ユニット)の人という意識しかないんで。

そもそも歪んでいる人ですからね。知り合ったのも『14歳』(2007年「群青いろ」作品)の頃です。

──映画の作り方にしても、集団的というか、いわゆる既存のシステムから外れた撮り方をしている人なので。こりゃあ久しぶりに爆発したなと思ったんですけど。それと同時に、『サニー』って連合赤軍と明らかに重なってるじゃないですか・・・というか、「群青いろ」常連の並木愛枝さんが永田洋子役を演った若松監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008年)のパロディみたいになっていく。

「総括キタコレ」っていうのがね(笑)。

──いやあ、あれには痺れましたねえ!!!

あははは! それ、狙っていますからね。あのシーンをやるだけのために作ったようなものです。というか、あれを思いついたときに、「ああ、これは連合赤軍なんだ」と気付いて、「総括」に替わる言葉がなにかないかなって思って、僕が「キタコレ」にしようって。

──お見事ですね! まあ、言葉としてはおかしいんだけど(笑)、よーく分かる。

「キタコレしろよ」って、ほぼ文脈が合ってないですからね(笑)。

映画『サニー/32』

2018年2月17日(土)公開
監督:白石和彌
出演:北原里英、ピエール瀧、リリー・フランキー、門脇麦、ほか
配給:日活 PG12

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