豊作だった上半期・外国映画、下半期は?

2018.4.8 18:00

映画『パーティで女の子に話しかけるには』 © COLONY FILMS LIMITED 2016

(写真3枚)

「映画のテクスチャーをあそこまで極めるって・・・」

斉藤「僕もトップ3に『パーティで女の子に話しかけるには』は入れたいけど・・・。『ウィッチ』もホントに素晴らしかったし、あと、やっぱり『ベイビー・ドライバー』やな。もう観た途端に『大好き!』って言ったもん(笑)」

田辺「ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの曲がかかった瞬間、『あ、これ好きです』って。あとやっぱり、あのiPodの使い方が絶妙に上手かったですよね」

斉藤「音ありきでアクションも進んでいくのね。結構長回しも多いんだけど、タイヤの摩擦音とか銃声なんかの効果音も全部音楽に合ってんだよね。それが、わかりやすく拍のアタマに入るんじゃなくて、ドラムのフィルみたいな感じで入るんよ」

春岡「それはセンスだよな」

田辺「それでいてミュージカルという」

斉藤「完全にそう。とにかく、映画のテクスチャーをあそこまで極めるってのは、スゴいよ」

──そして車がSUBARU「インプレッサ WRX」という。

斉藤「SUBARUがあれだけ格好よく走ってくれるってだけで、そんなにクルマ好きでなくともちょっとうれしくなる。それはともかくラストで流れる影ナレがウォルター・ヒルなんだって。明らかに『ザ・ドライバー』やからね、元ネタが」

田辺「そうなんですか!」

──大阪の宣伝スタッフが、自腹切ってでも試写会をして、みんなに観て欲しいって意気込んでましたね。

斉藤「そうそう(笑)。なんで『スパイダーマン:ホームカミング』みたいなのに金をかけて、こっちに金かけへんねんって思ったもん。あれ、今年のマーベルのなかで唯一出来が悪かった」

田辺「タイトルがダサすぎでしょ(笑)」

斉藤「『フェリスはある朝突然に』(1987年)のオマージュを突然やられても全然うれしくなんない(笑)。とにかくトム・ホランドに落ち着きがなくて、ガキ丸出しでウッサいのよ(笑)」

田辺「スパイダーマンはどんどんダメになっていく」

斉藤「スパイダーマンシリーズは、サム・ライミだけが抜群で。次のマーク・ウェブも早々に離脱して良かったよ、ホント」

春岡「ずーっと続けるシリーズじゃないからね。そもそも、スパイダーマンは暗い映画じゃなきゃじゃダメだよ。スパイダーマンが明るくなってどうするっていう。池上遼一や平井和正らが描いた翻案漫画『スパイダーマン』が好きだったから、俺は」

斉藤「あれは今、マーベルにも認められていますからね」

田辺「春岡さんは、ジム・ジャームッシュ監督の『パターソン』がいいって言ってましたよね?」

斉藤「僕は『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』の方がよかったけどなぁ」

春岡「『パターソン』がダメだって?」

斉藤「いや、全然いいんですけど、せっかく『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1986年)とかの、『いわゆるジャームッシュ』から月日を辿ってあそこまで来たのに、結局また分かりやすいところに戻るんやな、って」

春岡「俺的には、永瀬正敏とか出てきてさ、これでいいんだよみたいな感じというかね。それを、黒沢清監督とかがやってたら、なにやってんですか、そうじゃないんですよって思うんだけど、ジャームッシュが永瀬を使ってあそこに戻ったりすると、まあまあいいっすよって。そうだよねって、ちょっと同調しちゃうんだよね(苦笑)」

田辺「『パターソン』は、ジャームッシュの原点回帰的な作品という触れ込みでしたからね」

春岡「いいんじゃない、こうやって物議を醸すのって」

斉藤「いや、醸してないですよ。『キネマ旬報』では外国映画2位ですからね。この鼎談だから物議を醸すのであって(笑)」

春岡「それもまた悲しいよなぁ(笑)。あと、俺は『ゴッホ~最期の手紙~』だな。ゴッホの描いた油絵が動き出すとかはどうでもいいんだけど、面白かった」

斉藤「どうでもよくはないですよ(笑)。それが呼び物なんだから」

春岡「俺なんかは教えている学生に説明したわけよ。こういうアニメーションもあるから、アニメーション勉強する人は観た方が良いよって。ちょっと素人だましだなってとこを踏まえた上で、だまされたらいいんちゃう?っていう感じがあるんだよな」

斉藤「まあ、たしかに純粋なアニメーションへの興味は15分で消えますよね。でも意外に話が、最近のゴッホ研究を踏まえた上でのミステリで面白いんですよ。僕はアニメだったら、『KUBO クボ 二本の弦の秘密』が良かった」

春岡「日本の寓話をベースにした、スタジオライカのストップモーションアニメだよね。あれは面白かった」

斉藤「『コララインとボタンの魔女』(2010年)も手掛けたスタジオなんやけどさ、動きとイマジネーションがとにかく凄まじい。ま、ライカ作品につきまとうことだけど、ここまでやるとモデル・アニメーションなのにCGとあんまり変わらんというのはあるけどね。でも、物語はデティールまで凝りまくっていて、日本人がライブアクションでもいいから撮れよ!って感じだった」

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本