関西地下アイドル、出川哲朗と異例コラボ
「『売れる』だけではあっという間に破綻する」(りりかる*ことぱぉ)
──お金はずっと払い続けていたのですか?
ソロ契約から1年くらいは払い続けていましたが、デビューが決まったあたりから収めなくて良くなって、そこはホッとしました。だけど、デビューに際して用意された曲が2つしかなくて。それで25分枠のライブをやれと言われたので、結局は私のソロ時代のオリジナル曲を混ぜてやっていました。正直、雑な運営だなと。ソロ時代のお客さんも最初は来てくださっていましたが、やっぱり集客はどんどん減っていきましたね。あと、プロデューサーがライブ現場にくる確率も半分以下だったので、ほかのグループの大人の方々とちゃんと挨拶(名刺交換)もできず、自分たちは「ならず者」のような気分でした。
──運営がバックについてくれているメリットは感じられましたか?
大人の横の繋がりでイベントに呼んでもらえることはあったし、そこは本当に感謝しています。だけど、今の体制になってからの方がたくさん声は掛かりますよ(笑)。当時、Suzuと「このままユニットをやっていて意味があるのかな」と悩んでいましたし。自分たちだけでやろうと思えた決定的な出来事は、プロデューサーから「イベントの主催側から、集客がこれ以上少なかったらもう呼びませんと言われた」と聞いたときでした。そのイベントの方をとても信頼していたので、悔しくて、悲しくて、つらくて・・・。このままじゃいけないと思い、「セルフ・プロデュースでやらせてください」と伝えました。
──そして、セルフ・プロデュースの現体制になったと。
いえ、そこで浮上したのが以前に収めたお金の問題です。プロデューサーは、「君たちのために貯めたお金だから、ちゃんと使おう」と言ってきました。でも私たちは、事務所とは完全に離れたかったので、勉強代だと思い、受け取らないことにしました。もしそれを使うとなったら、結局は事務所在籍を意味すると考えたんです。そこから9カ月ほど名前だけその事務所に残し、すべてセルフ運営をした後、やっと完全に事務所を離れることができました。そのときには、収めたお金の話は一切出なくなったし、私たちもこじれるのが嫌だったから、お金のことは言いませんでした。それで今の体制に至ります。
──セルフ・プロデュースになってから、AH(嗚呼)は良くなりましたよね。「普段は、温泉旅館の若女将と介護施設の管理者として働いている」というキャッチーなコピーを入口にして、「あれ、実は楽曲も結構いいじゃん」という風にお客を取り込んでいった。知名度、収入面は事務所時代から格段にあがっているはず。
そうですね。私たちは自分で曲を作っているから楽曲制作費もかからないし、スタッフ代も必要ない。必要最低限でまわしています。それでも、CDはたくさん売れるんです。もちろん、大型のグループは数字の桁が違うけど、でも地下アイドルと呼ばれるなかでは正直、すごくお金は貯まっていますよ(笑)。CDを作っても、ありがたいことにどんどん売れちゃうから、遣う予定のないお金がたくさん増えます。
──いいことずくめですね。
でも、セルフ・プロデュースを売りにはしていないし、節約しながら自分たちなりに良いものを追求してやっていたら、結果としてそういう状況になりました。以前まで、「売れているグループは、お金をかけているから売れている」と思っていました。ただ、出し入れの金額の単位が大きいだけで、実は内情として儲けはそこまで出ていないのではないでしょうか。
──スタッフ代、アイドルたちの給料、衣装、楽曲制作費、交通費・・・。アイドル活動は、お金がどんどん飛んでいきます。
中型、大型のグループは関わる人数も多いから、それがバカにならない。2016年頃からそのクラスのアイドル・グループがどんどん解散していますよね。「売れていたのに、解散?」みたいな。続けていても採算が取れないと分かり、それが辞めどきになったんだろうと勝手に考えています。みんなが売れていると思っていただけで、その分お金がかかっているから儲けてはいない、みたいな。「売れる」という言葉がそもそもややこしい。「売れる」だけのモチベーションでは、あっという間に破綻するときが来ます。
──ことぱぉさんの目には、アイドル運営はブラックに映りますか?
ブラックでしょう! いや、みんな一生懸命ですよ。AH(嗚呼)の元プロデューサーも自分なりに一生懸命やっていたはず。ただ、私たちが求める熱量がまったくなかった。それはつまり、「ろくでもない事務所」「ろくでもない運営」に当たると思います。
──どういう人が運営に向いていると考えますか。また、ことぱぉさんは将来的にそういった仕事に就く可能性はありますか。
アイドル運営に向いている、ということだけで言えば「商売人」ですね。根っからの良い人は無理。私自身、自分にとても興味があるだけで、他人にはあまり関心がないんです。「この子は原石だ。売れさせたい、世に出したい」という考えより、それで儲けたいという気持ちが強く働く。まあ、年齢には逆らえないので、新しい人に託すのもアリかもですね。音楽レーベルも立ち上げたので、私がしわしわのババアになったら、そちらに移行するかもしれません(笑)。
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