大東駿介「不倫よりよっぽどオモロイ」
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「不倫より、想像が広がるものに興味を惹かれたい」(大東駿介)
──その腹を決めた直後の舞台が、この『ハングマン』ですね。英国初演の舞台を映像で観たんですけど、田舎のパブならではの閉鎖的な空気感と人間関係が、想像を超えた事態をどんどん引き起こしていくという、とてつもなくアナーキーな笑いに満ちた作品でした。
ですよね。『スリー・ビルボード』もそうやったけど、物語や人物の構造はすごくシンプルなんですよ。でも裏に潜んでいる「何か気持ち悪い」って思うモノに対して、観る側が勝手に想像を広げて楽しむことができるという点が、マクドナーのおもしろい所だと思います。日本版の台本も、これがまたメチャクチャ面白い。だからみんなが自然と「この本を大事に扱おう」という気持ちになれて、あれこれディスカッションしながら作っていきました。

──そのなかで、大東さんの提案が生かされた部分はあるんですか?
この本では、僕が演じるムーニーと、パブの人たちの訛(なま)りが違うのが重要なポイントなんですよ。都会と田舎の格差や差別意識が見えてきたりするから、それが笑いの種になったり。その言葉の違いを、日本語でどう表現するか? という所で、僕のアイディアを採用してもらえました。そういう意味では「戯曲が生まれる瞬間」に、初めて立ち会わせてもらった気分です。先日(埼玉で)2日間上演して、「まだまだおもしろくなる」という実感を得られたし、この舞台を今の日本でやる意味や、日本人にどういうモノが届くんだろう? と稽古場で考えていたことが、さらに明確になったと思います。
──本作は、元・死刑執行人で現在はパブを経営する主人公を巡る物語。大東さんは、彼が以前関わった事件の真犯人かもしれないと匂わせる、謎めいた青年役です。
ムーニーの背景については、翻訳台本を手がけた小川絵梨子さんと、演出の長塚圭史さんの間でも、見解がまったく違っていたんですよ。誰よりもこの本を読み込んでいる2人ですら、その核を正確につかみ切れないキャラクターなんです。この役を演じる上で圭史さんと話したのは「確信のない脅威こそが、一番怖いんじゃないか?」ということでした。暴力的な言葉を暴力的に向ければ、明らかな脅威になるけど、それではムーニーじゃない。彼は、例えば僕がこうしてお話している最中に、相手の目を見て「(それまでとまったく同じ口調で)しょうもない時間ですね」って、急に言い出すような奴です。

──ああ、確かに今「あれ、この人もしかしてヤバイ人?」って、一瞬怖さを感じました。
もちろん本当は、そんなこと考えてないですよ!(笑)でもその内側の怖さが外側に見えない・・・というか、本当は怖いのかどうかもわからない曖昧な存在に対して、人は一番脅威を覚えるんじゃないかと思うんです。僕はムーニーを演じながら、北朝鮮を重ねてしまいましたね。確信のない武力で、確信のない脅威をみんなに与えているという所で。もしかしたらマクドナーも、そういう世界情勢の縮図みたいなものを、裏の意図として書いてたのかもしれないです。
──でも同時に、主人公の娘を惹きつける魅力もあるし、本当に善悪がわからないんですよね。観た人によって解釈が大きく分かれる、本当に興味深い役だと思います。
そうそう、誰にもとらえられない。やっぱり今って、難しい時代やなあと思うんですよ。答えの出せないようなものに、いい加減に具体的な答えを出そうとするという。政治家や有名人が「良い」って言うから良くて、「悪い」って言うから悪いの? たとえば不倫問題を一斉に叩くけど、それって「悪い」って言った人にはわからない事情が、裏にあるんじゃないの? って。何かそういう「いい加減に具体的な答え」によって、想像するということがどんどん狭められていってる気がするし、変な時代だと思います。不倫なんかよりも、もっと具体的な答えが出せない、想像が広がるものに興味を惹かれたいですよね。恐竜とか宇宙の話の方が、よっぽどオモロイですよ!(笑)

──それが先ほど言われた「この舞台を今の日本でやる意味」なのかもしれないですね。
僕は勝手にそう思ってます。「これにも具体的な答え、出せますか?」って。ムーニーが本当はどんな男なのかという答えは、本当に人によって違うだろうし、しかもそれは全部正解だと僕は思うんです。答えってやっぱり、自分のなかだけでいい気がするんですよね。周りの評価はともかく、自分自身はその物事をどうキャッチして、どう感じるか? ということを僕は常に意識しているし、逆に自分と違う意見の人がいても否定しない。それが感性であり、個性やから。この舞台を観ることで、そういう原点みたいな所に戻ってもらえたらいいなあと思います。
舞台『ハングマン』京都公演は、6月15日〜17日に「ロームシアター京都 サウスホール」(京都市左京区)にて。チケットは一般7500円、25歳以下5500円で現在発売中。
舞台『ハングマン』
日程:2018年6月15日(金)〜17日(日)
会場:ロームシアター京都 サウスホール(京都市左京区岡崎最勝寺町13)
料金:一般7500円、25歳以下5500円
電話:075-746-3201
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