過激な美術家・榎忠、地元の神戸で個展

2018.6.14 20:00

榎忠《SALUTE C₂H₂》、《薬莢》、《AR-15》

(写真5枚)

神戸在住、日本を代表する美術家の一人、榎忠(1944~)。美術関係者の間では親愛の情をこめて「エノチュー」と呼ばれる彼の大規模な個展『榎忠展[MADE IN KOBE]』が、地元の「ギャラリー島田」(神戸市中央区)で7月2日までおこなわれています。

榎は1960年代後半に美術家として活動を始めましたが、現在に通じる過激で型破りな個性を発揮するようになったのは、1970年に結成されたグループ「JAPAN  KOBE  ZERO」の時代からです(1976年まで在籍)。彼らは街なかで大規模なパフォーマンスを繰り広げるなど、当時の美術の枠組みを超える前衛的な活動をおこないました。

榎忠《ハンガリー国へハンガリ(半刈り)で行く》

1970年代後半から個人で活動するようになり、頭髪を半分だけ刈った状態でハンガリーへ行く『ハンガリー国へハンガリ(半刈り)で行く』(1977年)や、女装してバーのママになる『BAR  ROSE  CHU』(1979年)、神戸ポートピア博覧会に出品した超大作の金属彫刻『スペースロブスターP−81』(1981年)など、今でも伝説として語り継がれる作品を次々と発表。また、自作の大砲型作品『LSDF(Life  Self  Defense  Force)』(1979年)をぶっ放すパフォーマンス(もちろん空砲)は現在も各地でおこなわれており、彼の代名詞となっています。

榎忠《BAR ROSE CHU》のコスチュームの一部と記録写真

榎の作品に共通するのは、異形であること、物騒であること、金属や武器への偏愛が感じられることですが、その背後に一貫してあるのは、世の常識や権威、権力を疑う姿勢です。一切のぬるさやゆるさを排し、自身のイマジネーションをとことんまで追求する。そんな厳しい態度を生涯かけて貫いてきたからこそ、彼の作品は現在でも輝き、世代を超えて支持されているのです。

本展では、3つの展示室に前述した代表作が配置されており、豊富な資料類を閲覧できるコーナーも設けられています。彼のファンはもちろんですが、初めて彼の仕事に触れる人にも親切な構成となっており、榎忠の世界を知る絶好のチャンスです。今、関西でおこなわれている美術展の中でも筆頭クラスの注目企画だと断言します。料金は300円。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『榎忠展 [MADE IN KOBE]』

期間:2018年6月9日(土)~7月2日(月)
時間:11:00~19:00 ※金曜休
会場:ギャラリー島田(神戸市中央区山本通2-4-24 リランズゲートB1・1F)
料金:300円
電話:078-262-8058

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