仏教美術の緻密な刺繡作品、奈良に集結

2018.7.5 06:00

国宝 刺繍釈迦如来説法図 奈良時代または中国・唐(8世紀) 奈良国立博物館

(写真5枚)

仏教美術と言えば、仏像や仏画を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし日本では、刺繍や織物など「糸」で仏や浄土を表した作品が数多く作られました。とりわけ古代では、大寺院の本尊としてまつられる花形的存在だった作品も。7月14日から「奈良国立博物館」(奈良県奈良市)で始まる『糸のみほとけ』展は、それらの代表作が一堂に集う貴重な機会です。

「糸のみほとけ」と聞いてまず頭に浮かぶのは、国宝『天寿国繍帳』(奈良・中宮寺所蔵)。聖徳太子が往生した世界を見たいと願った妃が発願したもので、約1400年前の品であるにも関わらず今も鮮やかな色彩を保っています。また、古代刺繍の完成形とも言える美しさで知られるのが、国宝『刺繍釈迦如来説法図』(奈良国立博物館所蔵)。縦2メートル超の大作で、寺院の本尊として尊ばれてきました。また、中将姫が織り上げたとされ、我が国の浄土信仰の核となった国宝『綴織當麻曼荼羅』(京都・真生極楽寺所蔵)は、修理が済んだばかりの名品で、本展開催のきっかけともなりました。

刺繍當麻曼荼羅(部分) 江戸時代 明和4年(1767) 京都・真生極楽寺 画像提供:凸版印刷株式会社

ほかには、大英博物館から来日する『刺繍霊鷲山釈迦如来説法図』や、故人の髪を繍い込んだ重文『刺繍阿弥陀三尊来迎図』(愛知・徳川美術館所蔵)、平安時代の仏画を思わせる美しい繧繝彩色の重文『刺繍阿弥陀三尊像』(石川・西念寺)などの名作が揃っており、非常に見応えのある内容となっています。仏教美術やテキスタイルアートのファンは見逃し厳禁です。期間は8月26日まで、料金は一般1500円ほか。

文/小吹隆文(美術ライター)

修理完成記念特別展『糸のみほとけ-国宝 綴織當麻曼荼羅と繡仏-』

期間:2018年7月14日(土)~8月26日(日)※月曜休(7/16・8/13は開館)
時間:9:30~18:00(金土曜と8月5日~15日は~19:00)※入館は閉館30分前まで 
会場:奈良国立博物館(奈良市登大路50・奈良公園内)
料金:一般1500円、大高生1000円、中小生500円
電話:050-5542-8600(ハローダイヤル)

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