細田守監督「親として感謝したい」

「映画の舞台にはああいう段差が絶対に必要」(細田監督)
──で、建築物の話でいくと、自転車を練習するシーンでも横浜の公園の・・・。
ええ、「根岸森林公園」ってところに残ってる競馬場跡なんですよ。
──調べたら1929年に建てられた観客席なんですね。あれが象徴的に、同一視点でふたつの時空を繋ぐものとして繰り返し出てくる。それだけでノスタルジアの力が喚起されて泣けてくるんですけど(笑)。庭とか、横浜の馬見所に限らず、この映画って建築がとても重要な役割を担ってますよね。お父さんが建築家という設定だし、なんでも舞台となる家は、実際の建築家に依頼されたとか。
そうなんですよね。今回はほとんど家のなかの物語になりそうだから、まず家が大事だと思って。まあ、どの作品でも大事なんですけれども(笑)、普通だったら映画の美術監督が家を設計してくれるんですが、今回は本当に建築家の人にお願いしてみるのが面白いなぁという話になって。
──そこでお仕事されることになったのが、数々の受賞歴を誇る建築家の谷尻誠さん。
ええ。谷尻さんがそれぞれの施主=家族に合わせて、すごく面白いおうちをたくさん作っていて。いろんな試行錯誤のなかで、ああいう変わった・・・「段差の家」と僕は言っているんですけれど、映画の舞台として家を考えるときに、ああいう段差が絶対に必要なんですね。昔、『時をかける少女』(2006年)を作ったときに、絶対に平地では出来ないと思って。やっぱり上から下へのダイナミズム、というのが映画には必要で。下から上へつり上がるとか、上から下へ流れ落ちるとか、なんかそういうものが家の構造としてある家でないと成り立たないなと、谷尻さんと作りながら思いました。

──斜めに上下するキャメラの動き自体が映画のダイナミズムを生むし、物語上では時間省略にも使われるし。で、中庭に一家の「アカシック・レコード(宇宙誕生以来のすべての存在の、あらゆる情報が刻まれている記録層)」である樫の木が鎮座して。
映画の美術監督じゃなくて、本当の建築家とやっていながら、すごく映画的な家になったという。
──空想的な着想から始まりながら、そういう極めて現実的なところを、極めて現実的な建築家に任せるというリアリズムから固めていかれるところが、実に細田監督らしいなあ、と。そもそも衣裳を手掛けるのが、スタイリストの伊賀大介さん。もはや細田作品では当たり前になりましたが。
建築を建築家の方に頼むと、ほかのプロダクトもその専門家に頼むことになっちゃって。劇中に出てくる架空の新幹線も、川崎重工業の亀田芳高さんという本当の新幹線デザイナーにお願いして。
──そういう方がいらっしゃるんですね、「新幹線デザイナー」っていう。
調べたんですよ。もちろんプロダクトですからデザイナーはいるはずなんですけれど、探して川崎重工業のデザイン科の社員の方なんで、なかなか表に名前は出てなくて。まあ「新幹線デザイナー」って人の名前は出てくるけれど、カラーリングをデザインしているだけであって、本当の車体のデザインじゃないんです。
──はあ、なるほど。
E5系とE6系っていうのがあって。E5系は「はやぶさ」で、E6系は「こまち」なんですけど、そもそもE5系が革新的なデザインで、その流れでE6系が出来ているんだけど、調べたらE6系のデザイナーしか名前が出てこない。でも、どう考えても関連性のあるデザインで。で、もっと調べたら川崎重工業の方だと分かって、架空の新幹線をデザインしてくれませんかと、頼みにいったんですよ。
──なんかすごい執着心ですね(笑)。しかも内部は、ちょっとH・R・ギーガー(『エイリアン』のクリーチャーデザイナーとしても有名な画家・造詣作家)でしたけれども(笑)。
そうそう。でも、メーカーのデザイナーにお願いしてあれが出てくるかね、っていうのが面白いですよね。
──ところで監督は「鉄ヲタ」なんですか?
いや、全然。上の子の影響というか、薫陶を受けて(笑)。子ども向けの鉄道の本を見ると、全然やさしくないんですよね。すごく細かいところまで書いてあって、それを読まされるわけじゃないですか?そういうところで鉄道の映画にもなりましたね。こんなにいっぱい鉄道が出てくるっていう。ちゃんと系統の名前まで(笑)。

──それと、未来の東京駅のリアルな壮麗さには息を呑んでしまうんですけど、あの遺失物係の異次元さには参りますね。マテリアルとしての違和感も含めて。デザインは絵本作家のtupera tupera(ツペラツペラ、亀山達矢と中川敦子によるユニット)さんですけど、あのキャラクターはいわゆる切り紙アニメーションですか?
そうです。というか、実際にアナログで紙を切り張りして作ったものをPCに取り込んで動かしてるんです。新幹線もそうですけど、ウチの子どもに影響を与えてる方たちへの親としてのリスペクトがすごくあって。親として感謝したい人がいっぱいいる、っていうことをなるべく映画のなかに反映したいなと思ったんですよね。
──星野源さんが演ってるおとうさんがやたら生々しいんですよね。茫然自失の仕方とかね、「子どもってこんなに反るんだ」とかね(笑)。リアリズムだなぁと。
抱っこ紐をつけてるおとうさんって、『おおかみこども〜』のときは珍しいというか、結構目立ってたんですよね。でも、今の時代は全然目立たなくなっちゃった。いっぱいいるから。社会が変化している最中という感じがすごくあるなと。もはや「イクメン」なんて誰も言わなくなりましたよね。
──そうですね、言葉としてフェイドアウトしましたね。
前はやたら言われてて、それが耳が痛い、みたいな感じだった(笑)。でも全然そうじゃなくなったっていうのも、これからもどんどん変化していくんだろうなって感じですよね。
映画『未来のミライ』
2018年7月20日(金)公開
監督・脚本・原作:細田守
出演(声):上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、役所広司/福山雅治、ほか
配給:東宝
企画・制作:スタジオ地図
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