地下アイドルに迫る、就職という名の岐路

2018.8.15 18:00

就職かアイドル活動か悩む、「てら*ぱるむす」の文殊たま

(写真4枚)

「アイドルはなぜ地下で夢を見るのか」をテーマに、大阪を拠点とする地下アイドルについて不定期で特集しているこの連載。第5弾となる今回は、アイドルの就職活動について取材をおこなった。

前回記事では、旅館女将と介護を職としていることを公言するユニット「AH(嗚呼)」をピックアップしたが、多くの地下アイドルは彼女らと同じように、何らかの職業とアイドルの二足のわらじをはいている。また、毎年3月になるとアイドル卒業を発表する女の子が増えるが、これは地下アイドルをやっている学生が就職を機に「仕事一本」を選択することが多いからだ。

関西にも今、就職について頭を悩ませながら活動しているアイドルがいる。「煩悩多き衆生(ファン)とともに修行する」をコンセプトに、お寺文化を全国に広めるために奮闘する浄土系アイドル「てら*ぱるむす」の文殊たまだ。

7月下旬にはNHK大阪放送の番組内で特集が組まれ、「体が勝手に南無阿弥陀仏」という発言がSNSで話題を集めた「てら*ぱるむす」。グループとして軌道に乗り始めているが、一方で文殊は今後の身の振り方をずっと考えているという。アイドルか、それとも就職か・・・。進路の岐路に立たされている文殊に話を聞いた。

取材・文/田辺ユウキ

「アイドルを辞めて還俗になっても後悔はない」(文殊)

──文殊さんが今、就職活動中だという噂を耳にしたのですが、現在の活動状況について聞かせてください。

その前にお伝えしたいことがあります。私たちは阿弥陀様の使命を受けて、人間界へやって来て、アイドルという文化を通してお寺や仏教の魅力を説いています。よく「コンセプトとして」と称されるのですが、そうではありません。私が悩んでいる就職活動についても、阿弥陀様の教えのもと、人間界のことをもっと知りたくなり、就職という概念が生まれました。

──な、なるほど。

そういう出自ですので、特定の好きなアイドルさんはおらず、そもそも地下アイドルという存在すら知りませんでした。しかしステージに立ってみるととても楽しく、次回の修行(ライブ)をどうするか、メンバーと話しあう瞬間はワクワクします。一方で、さまざまな職業にも興味を持ち始め、もっと人間の世界について知りたくなり、就職活動というものを意識するようになりました。

──具体的にはどういう職業に興味を持っていますか?

カメラマンです。お浄土からこの世界へやって来たとき、まず写真の勉強をしたんです。他人とコミュニケーションをとるのが苦手でしたが、カメラを通すと人と目を合わせられるし、他人と関わり合える。現在は、アイドルの写真撮影のご依頼をもらうことも増えてきました。

文殊たまが撮影した、アイドルグループ「ジョアンジョアン」のライブ写真

──ということは、写真に関する会社を中心に就職活動をしているのですね?

そうです。娑婆(しゃば=人間の住む世界)のお友だちは内定が決まり始めてきたので、焦り出しています。この春から就職活動をやり始めました。4月には説明会へ行きましたし、関東の撮影スタジオへの見学予定もあります。実際に、ほかのスタジオの就職説明会や筆記試験も受けました。

──関東の会社に就職希望なのですね。

はい。関東でカメラマンの仕事に挑戦してみたい。人間界でアイドル活動をしてみて、アイドル文化に興味を持ったので、ゆくゆくは彼女たちを追いかけて、撮りたい。

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