東山魁夷展、唐招提寺に奉納の大作も

2018.8.22 07:00

《道》1950年、東山魁夷、東京国立近代美術館蔵

(写真5枚)

昭和時代に活躍し、日本を代表する画家として多くの人々に愛された東山魁夷(1908〜1989)。彼の生誕110年を記念した展覧会が、「京都国立近代美術館」(京都市左京区)で8月29日よりおこなわれます。

横浜に生まれ神戸で育った東山は、東京美術学校を卒業するとドイツに留学しました。しかし父親の病を理由に留学を中断すると太平洋戦争に応召され、戦中戦後に妻以外の家族と家を失うなど、苦難の日々を過ごします。戦後いち早く絵画制作を再開した彼は、風景の美しさに開眼。「残照」や「道」といった初期の代表作を発表して人気画家の仲間入りを果たしました。

唐招提寺御影堂障壁画のうち、《濤声》(部分) 1975年、東山魁夷、唐招提寺蔵

その後は、東宮御所や皇居新宮殿の壁画を手掛けたほか、京都、北欧、ドイツ・オーストリアの風景を描いたシリーズを発表。昭和46年から55年(1971~1980)にかけては奈良・唐招提寺の御影堂障壁画という畢生の大作を奉納して、文字通り日本を代表する画家となったのです。

本展では約80点の作品で東山魁夷の画業を振り返ります。日本画家といってもヨーロッパ留学の経験もある彼の絵はどこか洋風の趣も感じられ、良い意味で穏当な作風が持ち味。それゆえ幅広い層に訴える魅力を持っています。そんな彼の代表作を初期から晩年まで満遍なく見られるのが醍醐味ですが、なかでも唐招提寺御影堂障壁画全68面の再現展示は大きな話題となるでしょう。

昭和から平成を経て、来年からは次の時代が始まります。日本人の自然観や心情にフィットした東山の作品は、今後も多くの人々に愛されるでしょう。巨匠画家の回顧展なのはもちろん、今このタイミングだからこそ見ておきたい展覧会、それが本展です。期間は10月8日まで、料金は一般1500円。

文/小吹隆文(美術ライター)

『生誕110年 東山魁夷展』

期間:2018年8月29日(水)~10月8日(祝・月)※月曜休(9/17・24・10/8開館、9/18・25休館)
時間:9:30~17:00(金土曜~21:00)※入場は閉館30分前まで 
会場:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)
料金:当日一般1500円、大学生1100円、高校生600円
電話:075-761-4111 

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