大徳寺の襖絵、現代のクリエーターで新調

2018.8.28 05:00

北見けんいち「楽園」(部分) 与論島に魅せられた北見は、自分と島民が過ごした情景をカラフルに描く。画面の一隅には真珠庵住職の姿も

(写真9枚)

京都の名刹「大徳寺」(京都市北区)。その塔頭寺院のひとつ「真珠庵」の方丈襖絵が約400年ぶりに新調され、『新襖絵完成記念特別公開』が9月1日から実施されます。

「真珠庵」は、とんちで有名な「一休さん」こと一休宗純和尚を開祖として、一休和尚が亡くなった10年後の延徳3年(1491)に建てられました。曽我蛇足と長谷川等伯が描いた寺宝の方丈障壁画が有名ですが、それらも修復されることになりました。

山賀博之「かろうじて生きている」(部分) モチーフは日本海。ウミネコと戦闘機に挟まれた中央の円は、己の心を移す窓を意味する

寺院の襖絵を新調と聞くと、高名な日本画家が描いたと思われるでしょうか。ところがそれは大間違い。マンガ「釣りバカ日誌」で知られる北見けんいち、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」などで知られるガイナックス社代表の山賀博之、ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズのコンセプトアーティスト、アートディレクターを務めた上国料勇など、それぞれの分野の第一線で活躍するクリエーターたち6名が共演しているのです。なんと型破りな発想でしょう。さすがは一休さんゆかりのお寺です。

上国料勇「Purus Terrae 浄土」 色彩は納得がいくまで何度も色を塗り重ねており、新襖絵の中では最も重厚感がある

北見けんいちは、与論島で島民たちと過ごした楽園的な情景を描きました。山賀博之は長谷川等伯へのリスペクトを込めた水墨画ですが、ウミネコと戦闘機が相対するなど、その世界感は独特です。上国料勇は、観世音菩薩、風神、雷神、不動明王などの神仏と雲海に浮かぶ宇宙船みたいな仏教都市を組み合わせたファンタジックな作品を描いています。ほかには、イラストレーターの伊野孝行、日本画家の濱地創宗、美術家の山口和也の作品が見られ、真珠庵に新たなアートの息吹を吹き込みました。

作品があまりにも斬新なので、観客の中には「伝統と格式を誇る寺院にふさわしくない」と思う人がいるかもしれません。しかし、我々が古典と思っている作品も、制作された当時は前衛芸術だったのです。今回の試みをどう評価するかは100年後、200年後の人に任せて、我々は今この時を楽しめば良いと思います。なお今回の特別公開では、通常非公開の書院「通僊院」や、茶室「庭玉軒」、史跡・名勝の「七五三の庭」も観覧できます。京都の芸術の秋を、「大徳寺真珠庵」で楽しみましょう。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『大徳寺真珠庵 方丈新襖絵完成記念特別公開』

期間:2018年9月1日(土)~12月16日(日)※10/19~21休
時間:9:30~16:00(受付終了) 
会場:大徳寺真珠庵(京都市北区紫野大徳寺町52)
料金:大人1200円、高中生600円、小学生以下無料(保護者同伴)
※未就学児童は書院「通僊院」、茶室「庭玉軒」の入場不可
電話:075-231-7015(京都春秋)

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本