一路真輝「気づけば歌をがんばってた」

2018.9.23 07:00
(写真4枚)

昨年、芸能生活35周年を迎え、女優として数々の舞台に出演する一路真輝。人気ミュージカル『エリザベート』日本初演の「伝説のトート役」としても知られる、元宝塚歌劇団雪組トップスターだ。そんな彼女が11月10日、京都初のコンサートを開催。京都フィルハーモニー室内合奏団との共演で、宝塚時代のナンバーやミュージカルの名曲を幅広く披露する。歌と共に歩んできたこれまでの道のりなど、さまざまな話を訊いた。

取材・文・写真(人物)/小野寺亜紀

「トートの存在をわからせる、使命を感じていました」(一路真輝)

──京都でコンサート『一路真輝&京フィル シャイニング コンサート in 春秋座』を開催される、いまのお気持ちは?

京都は中学の修学旅行で訪れたときから憧れの場所で、宝塚歌劇団に入団後もよく哲学の道から銀閣寺まで歩いて湯豆腐を食べたり、「鴨川をどり」を拝見したりしていました。ここからパワーをもらって舞台に立っていた宝塚生活から20年、大好きな京都でコンサートをできる喜びを、歌にのせてお客さまに届けられたらと思います。

──コンサートの1部は宝塚時代のナンバーを歌われるのですね。

京都でのコンサートなら、私の心の故郷である宝塚の曲で、と選曲しました。せっかく京フィルさんとご一緒させていただくので、クラシックの曲は入れたいなと思い、レハールのオペレッタ『微笑みの国』の曲も歌います。この作品とのご縁で、ウィーン国立フォルクスオーパー管弦楽団さんとCDを作ったことがあり、いま考えると恐ろしいんですけど(笑)、同時録音で演奏の輪のなかに入って歌ったこともありました。

──今回もオーケーストラとの共演となりますが、いかがですか。

やはり同じ舞台上に指揮者の方がいらして、生の弦や管楽器の音が聞こえてくるというのは、気持ちがいいと言ったらおこがましいですが、とても貴重な経験です。このコンサートもずっと待ち望んでいたので、夢が実現してうれしいです。

今年ライブハウスでも歌を披露。「小さな編成でのライブも素敵な空間ですが、反響があるホールのなかでは歌い方も変わり、別の魅力があります」と一路
今年ライブハウスでも歌を披露。「小さな編成でのライブも素敵な空間ですが、反響があるホールのなかでは歌い方も変わり、別の魅力があります」と一路

──1部はほかにどのような曲を?

私にとってすごく大事な曲、『愛と死の輪舞(ロンド)』を歌います。これは『エリザベート』初演の雪組公演のため、ウィーンのスタッフがオリジナルで作ってくださったトートのナンバーです。今でも覚えているのですが、当時この曲のデモテープを聴いたとき、「ウィーン・ミュージカルにしてはポップスな雰囲気の曲だな」と思ったんです。でもそこに小池先生(同作の潤色・演出の小池修一郎)の歌詞が付いたら、トートの哀しみや、シシィ(エリザベート)をストーカーのように追い続けた理由、トートの在り方が詰まっていて、とても重厚な曲と感じるようになりました。

──小池先生の歌詞は、ロマンティックでもありますよね。

そう、宝塚の男役の魅力が詰まった詞に、小池先生は仕上げられるんですよ。「蒼い血を流す傷口は―」なんて詞は、さすがに軽い感じには歌えないと思いました(笑)。『エリザベート』を初めてご覧になったお客さまは、トートのことを「黄泉の帝王」とルキーニが紹介しても、「トートって何者なの?」と思いますよね。だからこの1曲でその存在をわからせないといけない、という使命を感じていました。

──現在宝塚歌劇団月組が、10回目の『エリザベート』を上演中ですが、そうやって作品が続いているのはうれしいものですか?

うれしいですね。トートは十人十色と言ったもので、10人目の方も全然違うトートだと伺い、やはりそれがこのように続く秘訣なのだなと思います。

──2部では女優としてのミュージカルナンバーになるそうですね。

宝塚に14年間いて、辞めてから20年以上経ち、間に少しブランクはありましたが、ほぼ女優のほうが長くなりました。そのなかで自分の代表作というと、これもまた『エリザベート』(2000年~2006年の東宝版初代エリザベート役)ですね(笑)。シシィの歌として『夜のボート』を入れました。あと、これも原点となった、宝塚退団後すぐの『王様と私』の曲も新鮮に歌えたら。また『レ・ミゼラブル』とは(出演の)ご縁はないのですが、やはり曲が好きなので、ファンテーヌの『夢やぶれて』は歌いたいと思います。

「残念なことにお仕事でのご縁はなかったのですが、私の心のオアシスでした」と、京都との深いつながりを語る
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──『モーツァルト!』の『星から降る金』もですね。この作品は大阪では演じてらっしゃらないと。

博多と名古屋だけで、大阪でも東京でも出演してないのです。この曲はウィーンで観劇したときからとにかく大好き。何でしょう、ものすごく母性を感じるんですよね。でもとても体力のいる難しい曲なので、たくさん歌うときは選曲しないのですが、今回はせっかく京フィルさんとご一緒なので、歌えたらと思っています。

──この曲では「愛とは解き放つこと」など、子に対するような歌詞が出てきますが、ご自身も共感できますか?

はい、子育ての最終目標は子離れだと、あるお母さんから言われたのですが、とても共感できます(笑)。

『一路真輝&京フィル シャイニング コンサート in 春秋座』

日程:2018年11月10日(土)
会場:京都芸術劇場 春秋座
料金:一般6500円、学生&ユース席3000円
電話:075-791-9207

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