天野天街からの影響、上田誠の衝撃とは?

2018.11.23 07:00

上田誠(右)が天野天街(左)を敬愛するのはもちろん、天野もヨーロッパ企画のファン。2人はお互いの公演でトークゲストに呼ぶなど、仲が良い

(写真3枚)

【連載】舞台上等、どうぞご贔屓に vol.7

関西を拠点に活動する劇団・役者・カンパニー・団体・演出家・脚本家は数知れず。舞台・演劇関係者が自分たちのご贔屓をプレゼンテーションする本企画。今回は関西圏外だが、名古屋を拠点とする演劇ユニット「KUDAN Project」をご紹介。作・演出を務める天野天街(少年王者舘)に大きな影響を受けたという京都の劇団・ヨーロッパ企画の上田誠が、猛プッシュする!

—宇宙を折りたたんだ、摩訶不思議な劇—
僕たちヨーロッパ企画は、東京ではない京都で劇団をやっていて、そう覚悟のほぞを固めた理由として、ひとつには大阪に維新派がいたこと、もうひとつは名古屋に少年王者舘がいたこと、というのがある。維新派をみて、ああこんな表現は空前絶後だろう、と思っていた僕に、少年王者舘の天野天街さんは、空前と絶後のあいだのなんだか高次元的に入り組んだ、摩訶不思議な怪しい、そして懐かしくて恐ろしい、この世ならざる劇を見せてくれた。宇宙というのは小劇場のなかに折りたたまれていたのだと教えてくれたのが天街さんで、そしてこの世はマルチバースの方が面白いのだと知り、僕は京都で劇を作り続けることに決めた。

1982年に劇団「少年王者(現・少年王者舘)」を結成し、日本語の概念をくつがえすような脚本、映像やダンスを奔放にミックスした演出で、若い演劇人の尊敬を集める天野天街
1982年に劇団「少年王者(現・少年王者舘)」を結成し、日本語の概念をくつがえすような脚本、映像やダンスを奔放にミックスした演出で、若い演劇人の尊敬を集める天野天街

—異形なのに、かわいくて笑える『弥次喜多』—
そんな天街さんが少年王者舘じゃないところでやっている、また別の近接するバースがKUDAN Project。その代表作といえる『真夜中の弥次さん喜多さん』は、驚天動地の二人芝居です。お伊勢参りは雨で足止め、旅の記憶はねじれ、のけぞり、弥次さんは喜多さんの夢、喜多さんは弥次さんの幻。夢とうつつのトポロジー、いまと記憶のトートロジー。観ているうちに、今自分が何時間くらい劇場にいるのかわからなくなって、なんだこの体験、ってなったのを覚えています。ところがコメディなんです。こんな異形の時空間なのに、弥次さん喜多さんのいじらしさ、かわいらしさが、笑えるんです。

2014年におこなわれた『真夜中の弥次さん喜多さん』より
2014年におこなわれた『真夜中の弥次さん喜多さん』より

上田がこのように衝撃を語る、KUDAN Projectの舞台『真夜中の弥次さん喜多さん』は、しりあがり寿の漫画が原作。関西では実に13年ぶりに、12月7日~9日に「伊丹市立演劇ホール(アイホール)」(兵庫県伊丹市)で上演される。チケットは一般3000円、当日3500円(現在発売中)。

構成/吉永美和子

KUDAN Project『真夜中の弥次さん喜多さん』

日程:2018年12月7日(金)〜9日(日)
会場:アイホール(伊丹市伊丹2-4-1)
料金:前売一般3000円、25歳以下2500円(当日は各+500円)
電話:072-782-2000

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