ラン・ラン「クラシックの大きな一歩」

2018.11.30 17:30

多忙なスケジュールの合間、取材に応じた世界的ピアニストのラン・ラン

(写真4枚)

不朽の名作と言われるチャイコフスキー作曲のバレエ音楽を、ディズニーが圧倒的な映像美と至高の音楽をもって実写映画化した『くるみ割り人形と秘密の王国』。愛する母を亡くし、心を閉ざしたクララが迷い込んだ「秘密の王国」で、母が遺したメッセージを探すという壮大なファンタジー大作だ。この映画にピアノ・ソリストとして参加するのは、北京オリンピックの開会式などで知られる世界的ピアニストのラン・ラン。超多忙のなか、来日した彼に話を訊いた。

取材・文/ミルクマン斉藤

「子どもたちは、まさに未来そのもの」(ラン・ラン)

──かつて日本映画『のだめカンタービレ』で、主人公のピアノ演奏を担当されたことはありましたが、この映画『くるみ割り人形と秘密の王国』の話をお引き受けになったのはどういう経緯があったのでしょう?

『くるみ割り人形』は私の最も好きなバレエ曲です。クリスマス・シーズンというのは、子どもたちがバレエを観て、クラシック音楽の最初の一歩を踏み入れることがよくあるんですね。そのなかで、上演される機会がもっとも多い『くるみ割り人形』をディズニーが作るからには、世界中の子どもたちにクラシック音楽の素晴らしさを伝えるような映画に絶対にしてくれるだろうと思ったんです。

──なるほど、そういう思いがあったんですね。

さらに、指揮者のグスターボ・ドゥダメル、バレエダンサーのミスティ・コープランド、そして、映画音楽を担当しているジェームズ・ニュートン・ハワードといったファンタスティックな芸術家たちがこの映画『くるみ割り人形と秘密の王国』に関わるからには、きっと素晴らしいものになると思いました。

映画『くるみ割り人形と秘密の王国』 © 2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

──完成した映画をご覧になって、どうでしたか?

チャイコフスキー版のもつ叙情的な大きなメロディラインに対して、映画の音楽を手掛けたジェームズ・ニュートン・ハワードの『くるみ割り人形』は、チャイコフスキー版にはない繊細さや色彩感もあり、物語をパーフェクトに辿っていくような楽曲です。まったく違う2つのアプローチの楽曲を映画が橋渡しとなって映像としてまとめられているのが素晴らしいですね。

──お堅いイメージのクラシック音楽界ですが、この10年、その裾野を広げるというか、大きな風穴を開けた最大の立役者こそ、36歳のラン・ランさんと37歳のグスターボ・ドゥダメルさんだと思うのです。そんな2人の共演は、この映画の魅力のひとつです。

グスターボとは20代のはじめから何年も一緒にベルリンで、ダニエル・バレンボイムの下で勉強していたんです。子どもたちにどうやって音楽教育を施したらよいか、音楽を伝えたらよいか。クラシック音楽に対する愛をともに分かち合い、それを子どもの心に届けるにはどうしたらよいか。私たちは常に、そこに焦点を合わせているんです。なにしろ子どもたちは、まさに未来そのものですからね。ですから今も彼と一緒に過ごす時間は、とても特別なひとときなんですよ。

映画『くるみ割り人形と秘密の王国』

2018年11月30日(金)公開
監督:ラッセ・ハルストレム ジョー・ジョンストン
出演:キーラ・ナイトレイ、マッケンジー・フォイ、ほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

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