溶けゆくウサギ、細密彫刻家の新展開

2019.1.3 09:00

東影智裕《表層 002》2018年

(写真4枚)

兵庫県姫路市を拠点に活動する美術家・東影智裕(ひがしかげともひろ/1978~)。2017年春から1年間、ポーランドの古都クラクフに滞在した彼の、帰国後初の新作展が「ギャラリーノマル」(大阪市城東区)で2月2日まで開催されている。

東影の作品は、ウサギやウシなど動物の頭部をモチーフにした彫刻で、素材はエポキシ樹脂とアクリル。緻密な毛並みの表現が特徴で、剥製と見間違うほどのリアルさだ。しかし、写実性を追求しているのではない。彼のテーマは「生と死」。作品を見ると、動物の頭部が切り取られた姿は死体を想像させるが、見開いた眼はまるで生きているかのよう。そこにあるのは「生と死の狭間」であり、その相反性が観客の心を揺さぶるのだ。

東影智裕《素描 003》2018年

東影はポーランド滞在中に、同地の「光の陰影」に深い感銘を受けた。それは光学的現象だけでなく、人間の精神や生命に宿る光という意味も含む。帰国後、今までは気に留めなかった身近な風景にも目が届くようになったという。

そうした変化は新作にも反映されている。『表層』『素描』『Neutral』と題した立体で、動物たちの姿はより自由に造形され、なかには抽象化されたものもある。また、映像を伴うインスタレーションや、平面、版画作品では動物の姿が消えうせ、表皮の毛並みだけで表現するにいたった。本展を機に、東影は新たな段階に入ったと言える。美術ファンなら見ておきたい展覧会。入場は無料。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

『東影智裕 Living in Light』

期間:2018年12月22日(土)~2019年2月2日(土)
時間:13:00~19:00 ※日・祝休(12/28~1/4休)
会場:ギャラリーノマル(大阪市城東区永田3-5-22)
料金:無料
電話:06-6964-2323

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