声優界のレジェンド・神谷明「北条司さんと涙ぐんで喜んだ」

2019.2.7 07:00

数々の名キャラクターを演じてきた声優界のレジェンド・神谷明

(写真4枚)

無類のオンナ好きだが腕は超一流のスナイパー・冴羽獠を主人公にしたハードボイルドコメディ・・・80年代に一世を風靡した北条司の大ヒットコミック『シティーハンター』が、20年ぶりに映画『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』となって復活を果たす。もちろん冴羽獠の声を担うのは、日本声優界のレジェンド・神谷明。最新作の出演オファーに驚いたという神谷に話を訊いた。

「二つ返事でお答えしたかったんですけども・・・」(神谷)

──20年ぶりにシティーハンターが帰ってくるわけですが、オファーを受けた際の最初の思いをお聞かせください。

2017年10月末頃だったと思うんですけど、映画化されるというお話をいただいて。実は、その数年前から「ムリかな」と思っていたんですね。(製作の)読売テレビのプロデューサーの諏訪さんから、何度も企画書を出しては、それが通らず・・・と聞いていたもんですから、それこそ青天の霹靂のように出演依頼がきまして。嘘だろ!? ホントに!? と驚きが先に来て、続いて、現実に目を向けて、ちょっと待てよ、と。今、冴羽獠を演じることができるんだろうか、と。即答ではなく、1週間ほどお時間をいただいて考えたんですよ。

──二つ返事ではなく、いったん保留されたと。

声そのものは問題なかったんですけど、やっぱり50代くらいから、年とともにアーティキュレーション、滑舌が昔ほどではなくなってくるんです。これはもう誰もがそうなんですが、それと同時に、あのテンポでおしゃべりをすることができるのか。この2つが若干ネックになっていて。でも考えていくうちに、それよりもなによりも、復活する喜びの方が勝ったというか。よし、最大限に努力してみるか、ということで。気持ちとしては二つ返事でお答えしたかったんですけども、やっぱり現実を踏まえた上で。そこからスタートしましたね。

映画『劇場版シティーハンター〈新宿プライベート・アイズ〉』より © 北条司/NSP・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会

──『キン肉マン』『北斗の拳』でもおなじみの神谷さんですが、この冴羽獠との出逢いというのは、相当大きかったと思うんですね。事務所の名前も「冴羽商事」ですし。

若いころからずっと二枚目のヒーローを演じさせていただいて、それが『うる星やつら』(1981年)で少し三枚目の役(面堂終太郎)を、そのすぐ後に『キン肉マン』(1983年)で憧れの三枚目に挑戦させていただき、『北斗の拳』(1984年)でやっぱり若い頃から憧れていた渋〜い二枚目をやらせていただいて。そして、『シティーハンター』(1987年)に出逢ったとき、それらを全部ひっくるめた、いわゆる集大成の役だと思ったものですから、これはぜひやらせてもらいたいと。あの頃の声優の世界を振りかえったときに、僕しかいないと。そういう、ある種不遜な思いというのは、後にも先にもそのとき限りです。

──なぜ、そういう思いに至ったんでしょうか。

なぜそう思ったのか・・・それは今振りかえってもよく分からないんですが、熟成したタイミングだったからこその思いだったのかな、と。劇団に入って、山田康雄さん(ルパン三世の声、クリント・イーストウッドの吹き替え)、納谷悟朗さん(銭形警部、沖田十三の声)、熊倉一雄さん(アルフレッド・ヒッチコックの吹き替え)、このお三方の芝居を何本も見せていただき、自分の身体のなかにそれが叩き込まれていったんですね。それが10数年経って冴羽獠の役に巡り会ったときに熟成されて、今なら理想の演技ができると自分で思ったんじゃないかな。

シティーハンターといえばの、香の「100tハンマー」も健在 © 北条司/NSP・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会

──今回、20年ぶりの復活となるわけですが、オリジナルキャストが集結するのも大きなトピックです。香役の伊倉さんはじめ、キャストの方と久々に会って、どうでしたか?

劇場版が決まり、2018年2月に僕と伊倉さん、あとメインのスタッフの方と顔合わせがあったんですよ。先ほど、決断するまで若干の不安があったと言いましたけど、そのときに伊倉さんが「私って変わってない?」とか「私の声って、香?」とか、散々聞いてくるんですよ。でも、どう聞いても香なんです(笑)。「全然、変わってないよ」って言うと、伊倉さんも「神谷さんも全然変わってない」と言ってくれて。ちょっと待てよ。人に聞こえている声は、あのときのままなのかなと。実際、収録スタジオでみんなの声をひと声聞いたとき、一瞬で昔に戻りましたね。これは全員が、空気感で確認できた。あれは不思議でしたね。

──それは当時、相当濃密な時間を過ごされていた証拠ですね。

だと思います。もう、チームワークは抜群でしたし、諏訪プロデューサーが、『シティーハンター』の前からそうだったんですが、まずチームを作るということに主眼をおいて、作品を作ってましたんで、やっぱりそれが未だに自分たちの気持ちのなかに根付いていたんだって思いましたね。

映画『劇場版シティーハンター〈新宿プライベート・アイズ〉』

2019年2月8日(金)公開
総監督:こだま兼嗣
出演(声):神谷明、伊倉一恵、飯豊まりえ、山寺宏一、ほか
配給:アニプレックス

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