恒例の評論家鼎談、洋画・勝手にベスト3

2019.3.9 19:00

Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』

(写真3枚)

すでにLmaga.jpの恒例企画となった、評論家3人による映画鼎談。数々の映画メディアで活躍し、本サイトの映画ブレーンである評論家 ── 春岡勇二、ミルクマン斉藤、田辺ユウキの3人が、「ホントにおもしろかった映画はどれ?」をテーマに好き勝手に放言。2018年・下半期公開の、外国語映画ベスト3を厳選した。

「ネット配信はダメ、そんなこと言ってられない」(田辺)

田辺「僕のベスト外国語映画は、劇場映画じゃなくてNetflixの映画なんですよね。アルフォンソ・クアロン監督の『ROMA/ローマ』。12月から配信が始まってて。とてつもないですね。カメラもクアロンがやってるから・・・」

斉藤「全部自分で撮ってるんだよね。『ファントム・スレッド』のポール・トーマス・アンダーソンと通じるところがある」

田辺「前からクアロンとずっとやってるエマニュエル・ルベツキがやってたけど、途中で降りたらしくって。序盤の方で降りて、クアロンが自分でやり出したらしいんですけど、特に後半は、『これどうやって撮ってるんやろ!?』ってシーンが多くて。しかも使ってるのが無名の俳優で。波にのまれるシーンがあるんですけど、『これどう撮ったらこんな風にできるんやろう?』って」

斉藤「クアロンはチャレンジャーやからね、前から。『トゥモロー・ワールド』もそうだったけど、撮りたい画を撮るための機械をわざわざ作ったりするでしょ。でもあの海に乗り出すシーンは・・・それまで徹底的に横移動に執着してのあれだけに、『これがやりたかったんか!?』と唖然となる」

春岡「マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 −サイレンス−』でも、波にのみ込まれるシーンがあったけど、あれはアン・リー監督が『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』を撮ったプールなんだって。波の高さが調節できて、背景は全部CGなんだよ。で、波が来るところとかは本当にプールでやってるんだけど」

田辺「でも、今回のクアロンにはその作り物感がまったくなくって。僕はこれが圧倒的に。映像がすごかったなぁ。個人史的映画なんですけど」

斉藤「でも、軒並み映画祭にノミネートされてるよな」

田辺「しかも、Netflixですからテレビで観るわけですけど、たしか70mmで撮ってるんですよ(笑)」

斉藤「アホや(笑)。まあ、全部横移動なんで外景カットも誤魔化しが効かないんだけど、いかにも70年代って感じを街並みの隅々まで作りこんでてびっくりするし。でもさ、もし劇場公開されるとしても今どき70mmをかけられる劇場がないけどな、日本では」

春岡「俺さ、スバル座で昔バイトしてたとき、70mmのフィルム見たことあるんだよ。もう絵ハガキみたいなんだよ、1コマ・1コマが。普通のフィルム(35mm)の倍だから、こりゃあスゲえなぁって思ったもん」

田辺「それをネット配信のNetflixの映画で使ってるんですからね(笑)」

斉藤「それを許すNetflixがスゴいよなあ。ポン・ジュノの『オクジャ』が筆頭だろうけど、新作『007』の監督に抜擢されたキャリー・フクナガがアフリカの内戦を描いた『ビースト・オブ・ノー・ネーション』もなかなかの作品」

田辺「ホント、『ROMA/ローマ』のためにNetflixに加入しても全然いいですよ。テレビでしか観られないけれども、圧巻でしたね。今までネット配信作品はどうかなぁと思ってましたけど、『ROMA/ローマ』を観せられたらそんなこと言ってられない」

斉藤「クアロンは、ハズレないからね。メキシコでのデビュー作以来、全部観てるけど、今度のは新境地にして今までのベストといっていいしね。今のところ賞レースにほとんど全部ノミネートされてるけど、当然」

春岡「あとは『カンヌ国際映画祭』だけ? ネット作品はダメとか言ってたの」

斉藤「いや、カンヌはNetflix作品を2017年に2本コンペに入れたけど、それから反発が大きくて。でもそんな論争なんて、これで無意味になってきたかなあ」

春岡「そうなんだ。『ベネチア国際映画祭』は入れてたよね」

斉藤「ベネチアはさほど拒否症状なさそうやね。まあ、アカデミー賞はロサンゼルスで1年間に7日以上劇場で上映しさえすれば条件クリアなわけでしょ。ま、そんなこんなで年の瀬に『ROMA/ローマ』を観た後となっては結構揺らぎはするんだけど、僕の2018年下半期のナンバー1は『ヘレディタリー/継承』で決まり!」

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