名物書店の再出発、作家と立ち飲み店を
大阪・アメリカ村(通称アメ村)の書店「スタンダードブックストア心斎橋」(大阪市中央区)が4月7日に閉店することが決まった。同時に、店主・中川和彦さんは場所を移しての新店オープン計画を発表。「これまでに縁のできた人たちと、もっと関わる店を作りたい」と展望を語った。
書店員の偏愛に満ちたコーナー展開と、選書に紐付いたライフスタイル雑貨の販売で若者の好奇心を育んできた同店。なによりも魅力的だったのは、併設されたカフェスペースで行われたトークイベントの数々だった。直近の3年間だけで700名以上の作家を招き、登壇した多くの作家がビールを片手に、「よかったら一緒に飲みながら聞いて」と語り出す力の抜けた時間は、作家と読者をつなぐコミュニケーションの場となっていた。
ビルとの契約終了で閉店が決まると、すぐさま新店へと動き出した中川さん。しかし資金や運営上の理由から新店でのカフェ併設はあきらめ、規模を縮小することに。カフェスペースが無くなれば、客席やドリンクの提供が必要なイベントを続けるのは難しい。コミュニケーションの場を残したいと悩んだ彼の頭に浮かんだのは、自身もよく通う「立ち飲み酒場」の併設だった。
立ち飲み併設の書店といえば、関西には「遠藤書店」(京都市南区)、「レボリューションブックス」(京都市下京区)などがある。ほろ酔い気分で本も買えるこの2店との違いといえば、「作家さんにカウンターに入ってもらって、お客さんと話してもらうのもいいかも」という距離の近さだろう。中川さんは、「立ち飲みと本屋は似てる。一人でふらっと立ち寄れて、本を買ったりたくさんお酒を飲んだりしなくても、気兼ねなく店に出入りできる」と店の敷居は低くしつつ、作家と読者を近づける新しいコミュニケーションの場を考えている。
新店について中川さんは、「これまで縁のあった人たちと、もっと関われる場所にできれば」と話す。「トークに出てもらった発酵の専門家・小倉ヒラクさんに日本酒のセレクトを相談したり、カレー作りが趣味のインド楽器奏者・石濱匡雄さんにレシピ開発を頼んだりと声をかけて回ってる」と明かす。アメ村の13年間で培ってきた縁とともに、新しい店の個性を作るべく動いているようだ。今後はクラウドファンディングを活用した資金集めをおこなう予定。「新しい店でできることを、また1から試行錯誤したい」と、再出発の気持ちを表している。
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