ゆりやん「スベるスベらない私が決める」

2019.7.9 17:00
(写真3枚)

「私はおもんないとは思っていない」(ゆりやん)

──ご自身が面白いと思ったフレーズはずっと繰り返したり、周りが引いていても折れないところがありますよね。そういう心の強さはどこから来ているんでしょうか。

まったく強くなくて、緊張しているんですけど、信じてもらえない(笑)。でも「知るか」という気持ちというか、あとから「あれ、言われへんかった」って後悔したくないんです。そう思うくらいやったら、今「知るか」と思ってやるしかない。緊張するし怖いけどやるしかない。だいぶん迷惑かけてますけど(笑)。

──周囲の困ってる感じも面白いです。

あとは、やり続けたらおもろなってくるんちゃう?って。ただ、それは周りの人に助けてもらってやり続けられる。私ひとりでウケているわけじゃなくて、周りの人がいてくれないとウケないんです。迷惑かけてるけど、そこで止めるより、やってみたらその先に何かあるかもって感じます。

──最近、何か見えたものはありますか?

そうですね・・・「おおきにです。おおきにと申します、名前!」というギャグがあって、それは大親友からも意味がわからんと言われているんですけど、気に入ってずっとやり続けていたんです。そしたら先輩やお客さんも最後に「名前!」って一緒に言ってくれるようになって。1回あかんわと思っても諦めなかったら耳が慣れて、おもろいとかおもんないとか関係なしに「名前の人」ってなる可能性があるとわかって。

──面白いか面白くないかは一旦、置いといて?

いえ、絶対におもろくないとダメで、私はおもんないとは思っていなくて・・・。爆笑ネタとも思っていないですけど(笑)、それをみんなでやるというのがいいなと思うんです。急にそのネタを始めても、みんなで「名前ー!」と言うから楽しいんです。自分でも意味がわかりませんが。

──ゆりやんさんのネタは不条理だと言われることが多いですよね。

不条理と言われると思います。当たり外れが激しいというか、一貫性もないですし・・・。ただ、『R−1ぐらんぷり』に出させていただいて、テレビにも呼ばれるようになって、さっき言ったように「知るか」と思って、今しかないやろと前に出たときに「何、こいつ」という空気になることが、最初は今よりもっとあったんです。

自身のネタについて、「私はおもんないとは思っていなくて・・・」とゆりやん
自身のネタについて、「私はおもんないとは思っていなくて・・・」とゆりやん

──悩まれた時期もあったんですね。

だから先輩に「まともにしゃべられるようになりたいです」とか相談したら、「いいよ、これで」って。「ずっとやり続けたら、ゆりやんはそういう人やってわかってくれるから。話を振ったら変なこと言うやろ、ボケるやろと、そういうふうに周りが認知してくれるようになるまで続けた方がいい。それが正解なるから」って言ってくださったんです。千鳥のノブさんなんですけど。それで続けようって。でも、それで成長しているかどうかは定かではないです(笑)。

──なるほど。結果を出されているというか、今もバラエティー番組などにも呼ばれるということは、そういうことだと思います。

いえいえ。私が言ったことをMCの方や周りの方が「なんやねん」とかフォローしてくれて、何とかしてくれはるので、私ひとりの力ではないんです。でも続けたいって甘えてるんです。それでも続けていきたいなと思います。

──トークライブと、ネタライブではまったく違うとは思いますが、ピン芸人の場合は自分で落として拾っていかなければいけないのかなと思うのですが。

劇場に出始めたころは、何も考えていなくて。そこで、ちゃんと落とさないとあかんと教えてもらいました。先輩を見ていたら、決めゼリフやわかりやすいこと言ったらウケるとわかってきて。例えば「調子乗っちゃって」もそうなんですが。それで落ちてるわけじゃないですけど、「何か言ってほったらかし」ではなくなって。自分なりにそういうことを考えてるけど、結果的に丸投げしているのと同じぐらいの質しかない(笑)。「名前―!」とか言って落としているつもりやったんですけど、落ちてるか?と。

──そこもひとつの芸風になっていますよね。

甘えですよね。もう全部、誰かに任せているんですけど、舞台では何もないところで「何か起きろ」と思うことがあって。勝算があるかどうかはわからないけど、「何かやってみてゾクゾクしようや」って思うんです(笑)。お客さんが楽しいかどうかが一番大事ですけど、でもそれも伝わるんちゃうかなと思って。

──とりあえず、やってみると。

最近、友近さんにお世話になっていて、めちゃ勉強になるんです。友近さんはしゃべっているだけで楽しい方向に行くので、やっぱりすごいなって。あと、RGさんとなかやまきんにくんさんも大好きで尊敬していて、お2人もどんなときでもずっと面白いんです。スベることがないなと思います。スベるという感覚も、私たちがやる側がスベったと思ったらスベったけど、やる側がスベってないと思ったらそれはスベってないんです。

──スベるスベらないは「お客さんだけでなく作った本人が決めることでもある」という捉え方は、現代アート的な見方ですね。友近さんも人をよく観察されていて、ゆりやんさんも人の細かいところをよく見られているという印象があります。

「やる側がスベってないと思ったらそれはスベってないんです」と言い切る
「やる側がスベってないと思ったらそれはスベってないんです」と言い切る

観察している気はないんですけど、自分自身がうがった人間というか・・・。中学校のとき、派手なグループに入りたかったけど入れてもらえず、「くそっ!」って思ったんです。それで「自分は絶対芸人になって、あとから『友だちやった』って言われても知らんからな」と。元々憧れていたのに、一時期、どんどん嫌な方に向かっていたんです。でも、それってハッピーじゃないなと思って。私の好きな先輩にもそういう人はいないって思って。

──なるほど

そんなある日、新宿で手押し相撲をしている人を見たんです。そのとき、それまでだったら「田舎もんやな」って思っていたと思うんですけど、かわいいなと思って。やることがいっぱいある街で、なんで手押し相撲してるんやろう、かわいいやっちゃなーって。「周りの良さに気づいてない人」という例えで、「新宿で手押し相撲」っていうことわざになりそうやなとか。そういうふうに思う方がハッピーで楽しいなって思ったんです。友近さんもいろんなタイプの人のコントをされていますけど、愛があるというか、ハートフルだと思います。私もそうありたいなと思います。

──意地悪な目線は共感されやすいですが、それをする方自身の印象もどんどん狭められていくような気がします。でも愛情があると世界はどんどん広がって、良くなるんじゃないでしょうか?

そうかもしれないです。もちろん腹立つときもありますけど、私みたいなものは人に怒りを持っていたらアカンなと思います。嫌味を言うより、ほんまに楽しいアホやなみたいな方がみんなハッピーでええやんと思います!

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7月からは全国5都市を巡回する単独ライブツアー『ゆりやんJAPANツアー』がスタートし、ますます勢いに乗るゆりやん。7月12日には「なんばグランド花月」の本公演にも出演し、彼女がスペシャルサポーターとしてPRする『スラバのスノーショー』は7月19日から「TTホール」(大阪市中央区)で上演される。

ゆりやんレトリィバァ

『スラバのスノーショー』
日程:2019年7月19日(金)〜8月7日(水)
会場:TTホール(大阪市中央区大阪城3-6)
料金:SS席10000円、S席8500円
電話:0570-550-100

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