柚希礼音、宝塚トップで知ったリーダー像

2019.7.20 06:00
(写真3枚)

19世紀半ば、産業革命まっただなかのアメリカ・ローウェルで、女性の権利を求めて闘った女性たちを描いたミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』が今秋、東京・大阪で上演。貧しい家族を助けるため、また自らの自由を得るため、大規模な紡績工場が立ち並ぶローウェルへやってくるサラ・バグリーを演じる柚希礼音に、話を訊いた。

「みんなが賛同してくれると大きな力に」(柚希礼音)

──本作は自由を求めて闘った女性を描いていますね。

賃金や労働時間、労働環境があまりにも酷い女性たちが声を上げるのは、男女の立場も違う時代ですし、すごく勇気がいること。ここに描かれている女性たちは、本当に勇気のある人たちだと思います。

──サラ・バグリーは、女性の権利を求めて労働争議の場でみんなを率いた実在の人物です。柚希さんも宝塚でトップスターを経験されたという点で共感する点はありませんか?

宝塚のトップを経験して分かったのは、自分ひとりで立ち上がっても無力であること、みんなが賛同してくれることによって大きな力になること。

トップ時代に、若い子を引き上げようと、踊りを教えたり声をかけたりしましたが、その子が悩んでなかったり、今、欲しい言葉じゃなかったら伸びないということも分かりました。

でも、そのときは分からなくても、数年後に「あの時の言葉が分かりました」と言ってくれることもあって。逆に自分が毎日、ただひたすらに前を向いて闘っていると、その姿を見て「あれってどうやるんですか」と聞かれることが多くなったり。

リーダーとしていろいろ体験したので、サラが矢面に立って、責任を持って前を進んだからこそ、みんなが信頼してついていくんだろうと共感します。

私がサラの一番の味方になって、本当に世のため、自分自身のため、女性のために立ち上がった人だと知ってもらえるよう、細かく演じたいと思いますし、説得力のある、中身のある人にしたいです。

──これまでもナポレオンやマタ・ハリなど実在する人物を演じられました。架空の人物と実在の人物では、演じるにあたって何か違いはありますか?

実在の人物は資料が多いので、たくさん参考にできます。ただ、自伝以外はその人の周りが書いていることなので、「おいおい、そんなこと言うなよ」と、本人の気分になることがたくさんありました。

特にナポレオンは、さっきまで味方だった人が5秒後には敵というようなことをたくさん経験して、すごく苦戦した人。周りの人が書いたことに「本当にナポレオンのことを理解していた人は誰?」と、だんだん腹が立って来たり(笑)。

サラ・バグリーに対しても、周りの人が何を言ったか、そのあたりから紐解いていって、本当は何を求めて何をしたのか、実在した人物だからこその表現をしたいです。

休日は、「できれば海外に行って太陽を浴びて、風を感じて、深呼吸をして、ぼんやりと過ごす。3日間しか休みがなくてもどこかに行く」と柚希礼音
休日は、「できれば海外に行って太陽を浴びて、風を感じて、深呼吸をして、ぼんやりと過ごす。3日間しか休みがなくてもどこかに行く」と柚希礼音

──今回は19世紀半ばのアメリカが舞台ですが、その時代の人物を演じる上での役作りはどのようにされますか?

その時代の生活がどんなものだったのか、ストーリーに関わらず知るようにしていて。知った上でも分からないことは、そういうふうに生活してみます。そうすると性格も全然違ってくるみたいで。物静かな人だったらなるべく物静かに過ごすようになります。

──そういうふうに過ごされて、舞台以外の柚希さんにも何か変化はあるんでしょうか。

すごくあるみたいです。楽屋での過ごし方も違うみたいで、説教ばかりする男の人の役では「あのときの柚希さんは怖かった」と言われたことも(笑)。ロミオみたいにかわいい役のときは、急にかわいくなるみたいです。役がしっくり来るように自分で作っていかないといけないので、稽古中はなるべく役の雰囲気で過ごしますね。

──役がしっくり来たときは、舞台上からの景色も違いますか?

そうなったら最高で、もう舞台と客席ではなくなります。たとえば、兵士たちが並んでいて、風が吹いていて、風景も空気も感じます。お客さまのことも、市民がいるように見えたり(笑)。そうなると最高に楽しいのですが、それは自分でそういうふうにもって行かないといけなくて、でも、なかなか行けないところです。

──集中力が必要ですね。特に長期公演だと、その役で居続けるという力が必要ですね。

そうなんです。私たちは毎日公演をしていますが、お客さまのなかには、その日が人生で初めて観る舞台で、それから一生観ない方もいるかもしれない。入院していて、頑張って外出届けを出して観に来られた舞台かもしれない。その1回1回がどれだけ大切か、20年やってきて身をもって痛感して・・・。

全国各地をまわって、海外も行って、舞台ってエンタテインメントではあるけれども、それに救いを求めたり、勇気をもらったり、明日も頑張って生きていこうと思ってくださる方がたくさんいらっしゃるということが分かりました。だから大切な公演に向き合っているときは、すごく神経質になりますね。

A New Musical「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」

日程:2019年10月25日(金)〜27日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール(大阪市北区茶屋町19-1)
料金:S席12500円、A席10000円、B席8500円
電話:0570-200-888

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