恒例の評論家鼎談、邦画・勝手にベスト3

2019.8.3 18:00

塩田明彦監督『さよならくちびる』の成田凌

(写真12枚)

すでにLmaga.jpの恒例企画となった、評論家3人による映画鼎談。数々の映画メディアで活躍し、本サイトの映画ブレーンである評論家 ── 春岡勇二、ミルクマン斉藤、田辺ユウキの3人が、「ホントにおもしろかった映画はどれ?」をテーマに好き勝手に放言。2019年・上半期公開の、日本映画ベスト3を厳選した。

「今年の上半期は恋愛映画が大豊作」(田辺)

田辺「2018年の上半期の鼎談で、成田凌の配役がちょっと一辺倒ではないかという話をしていたのを覚えてます?」

斉藤「そやったね。でも今年はその問題は解消しつつあるよね」

田辺「そうなんですよ。パンキッシュなバカ役はイメージに合い過ぎてイマイチに見えるけど、やさしいバカってのはめちゃくちゃいいんですよ」

斉藤「今泉力哉監督の『愛がなんだ』の話やね」

春岡「『愛がなんだ』の成田凌は、抜群にハマッてたよな」

田辺「そうです。あと、塩田明彦監督の『さよならくちびる』もそうでしたし」

斉藤「今度は、関ジャニ∞の大倉忠義くんとゲイの役やろ? 行定勲監督の『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年公開予定)で」

田辺「そうですよね。どんな役でもいけるんですよね」

斉藤「成田くんをキャスティングした映画関係者に聞いたら、『やっぱり成田凌は上手い!』って。今泉監督も行定監督もそうだって」

春岡「あんまり個性がないように見えて、実はちゃんと自分のカラーが出てるから上手いんだろうな」

田辺「『さよならくちびる』で小松菜奈が初めて成田と会ったときに、『そんなに2枚目じゃないじゃん』みたいなことを言うんですけど、その瞬間から2枚目に見えなくなってくるっていう不思議な魅力があって」

斉藤「こないだ、今泉監督と話したときは、『成田くんに何を着せようか悩んだ』と。だらしない役やから、そういう服を着せようとデザイナーと選んだんだけど、それはそれで格好よく見えるから『困った』って(笑)」

春岡「まあ、しょうがないよな(笑)。かっこいいもん」

田辺「その『愛がなんだ』もそうでしたけど、今年の上半期は恋愛映画が大豊作でしたね」

斉藤「『愛がなんだ』なんかはさ、こじらせた若い男女の恋愛に見えるかもしれないけど、完全な純愛映画やん。地獄の純愛やけど(笑)。今泉作品としてやってることはこれまでと変わらないのに、彼の最高傑作であることは間違いないよね」

田辺「今泉監督はずっと一方通行の恋愛を撮っている。視線を合わせようとしたらその人は別のところ向いてて、戻したらこっちにまた戻ってきて、とか。今泉監督本人も言っていたけど、やってることはずっと一緒ですね」

斉藤「角田光代の小説が原作ではあるんやけど、今泉さんが全部書いたようなセリフやったよな。原作との幸福な出会いって感じ」

今泉力哉監督『愛がなんだ』のワンシーン(岸井ゆきのと成田凌)

田辺「Lmaga.jpで今泉監督のインタビューをしたとき、マモちゃん(成田凌)がテルコ(岸井ゆきの)の家にきて、うどんを作るシーンがあるんですけど、今泉監督が思ってもみなかった場所に座ったという」

春岡「ああ、そういうシーンあったね」

田辺「今泉監督は、ここはテルコの家だから、マモちゃんをどこに座らせるかめっちゃ考えたらしいんですけど、『成田くんどうしたらいい?』って聞いたら『ここじゃないですか?』って、めちゃくちゃ近くに座って。あの思いがけない距離感は面白かった」

斉藤「確かに、あそこに座ったらテルコの顔を見なくて済むっていうね」

田辺「公開されてから、ずっと上映館は増え続けてますし。今泉監督は、自主映画界隈では『天才』とか『敵にまわしたくない』と言われるほどの実力の持ち主でしたが、ついに大ブレイクですね」

斉藤「あとは、山戸結希監督の最新作『ホットギミック ガールミーツボーイ』

次頁:「山戸結希監督は大林化してるとは思う」

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