ママ企画のユニークな動・植物園、奈良に

2019.8.5 09:00

注目の「十二神将」より、今年の干支であるイノシシが頭部と腹部に表わされた亥神像

(写真7枚)

夏休みに入り、一風変わったユニークな動物園と植物園が奈良に出現した。仏教美術に登場する動物や想像上の生き物を表現、描いた作品が集まる『いのりの世界のどうぶつえん』と、タネや花粉の自然遺物、木簡や土器などの考古遺物から1300年前の「空想上の平城京植物園」へ行ってみようという『ならのみやこのしょくぶつえん』だ。

どちらも、小学生のママの顔を持つ研究員・学芸員が担当した子ども向けの企画展。動物園は「奈良国立博物館」(奈良市/〜9月8日まで)で、植物園は「平城宮跡資料館」(奈良市/〜9月1日まで)で開催されている。

専門的な内容にも関わらず、クイズにチャレンジしながら展示を楽しめ、かわいいイラストによる視覚的面白さ、分かりやすい図録など、随所に担当者のお子さんの意見が取り入れられたという、工夫が凝らされた両企画展。どちらも子どもは入館無料で、初めてのミュージアム体験や夏休みの自由研究にはもってこいの内容だ。それぞれの担当者に話を訊いた。

「奈良国立博物館」の中川あや研究員が企画担当。図録などに自身のお子さん(小5と小2)の意見を取り入れたという
「奈良国立博物館」の中川あや研究員が企画担当。図録などに自身のお子さん(小5と小2)の意見を取り入れたという

まずは、頭部に干支の動物たちがいる「東大寺」の十二神将や、古代のおとめ座やふたご座など十二星座が描かれた胎蔵図像が展示される『いのりの世界のどうぶつえん』。特に十二神将は、一度に12体が見られるまたとない機会だ。

中川さんがおススメの仏涅槃図。表情豊かな動物や生き物たちが描かれている
中川さんがおススメの仏涅槃図。表情豊かな動物や生き物たちが描かれている 「仏涅槃図(部分) 個人蔵」

企画担当した同博物館の中川あや研究員は、「個人的なおススメは、お釈迦さまが亡くなられた場面を描いた『仏涅槃図』。さまざまな動物や生き物が描かれていて、なかでも猫が描かれているのは珍しいです。悲しい場面なのに、悲しんでいない感じの動物もいて表情豊か。色々探すとずっと見ていられるほど面白いです」と話す。

「奈良文化財研究所」の廣瀬智子アソシエイトフェローが企画担当。小4、小2のママなので、「子どもたちが夏に涼しくて無料で遊べるものを」と企画した
「奈良文化財研究所」の廣瀬智子さんが企画担当。小4、小2のママなので、「子どもたちが夏に涼しくて無料で遊べるものを」と企画した

そして、あまり前例が無いという植物をテーマにした考古の企画展『ならのみやこのしょくぶつえん』。奈良時代に、花鳥風月を愛でる場として植物が植栽されていたなど、植物園といえるものが実在したことにふれ、1300年前の蓮の実物や、蓮の葉について記された珍しい木簡などの出土品が展示。当時どのようにその植物が使われていたかなどをイメージしながら学ぶことができる。

長屋王邸から出土した1300年前の「蓮」
長屋王邸から出土した1300年前の「蓮」

担当の廣瀬智子アソシエイトフェローは、「当時の役人たちが仕事の間に見たり、食べていた植物が、平城宮の大きなゴミ捨て穴から出土した花粉やタネからわかるんですよ。特にギシギシという雑草などは、現代の平城宮跡でも生えていますが、木簡から、奈良時代には食用にしていたことがわかっています。奈良時代の人々と現代の私たちが見ている植物はそれほど変わらないという事を知っていただくとともに、現代とはちがった利用法があったことに驚きを感じてもらえれば。そして、実際に平城宮跡でその植物を探しに散策しても面白いのでは」と話した。

期間中は、両施設とも親子で楽しめるワークショップや講座を開催。両施設間を直行で往復するシャトルバスも特別運行する(1日2往復/乗車無料)。この夏、奈良でしか味わえない古代の不思議な動物園と植物園を親子で楽しんでみてほしい。

取材・文・写真/いずみゆか

『いのりの世界のどうぶつえん』
日程:2019年7月13日(土)~9月8日(日)・月曜休
時間:9:30〜18:00 ※閉館時間は日によって異なる
会場:奈良国立博物館 東新館(奈良市登大路町50)
料金:大人520円、大学生260円

『ならのみやこのしょくぶつえん-土の中の花鳥風月-』
日程:2019年7月20日(土)~9月1日(日)・月曜休
時間:9:00~16:30
会場:平城宮跡資料館 企画展示室(奈良市二条町2-9-1)
料金:無料

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