恒例の評論家鼎談、洋画・勝手にベスト3

2019.8.17 20:00

映画『スパイダーマン:スパイダーバース』

(写真6枚)

すでにLmaga.jpの恒例企画となった、評論家3人による映画鼎談。数々の映画メディアで活躍し、本サイトの映画ブレーンである評論家 ── 春岡勇二、ミルクマン斉藤、田辺ユウキの3人が、「ホントにおもしろかった映画はどれ?」をテーマに好き勝手に放言。2019年・上半期公開の、外国語映画ベスト3を厳選しました。

「世界中のアニメ好きが狂喜乱舞した」(春岡)

田辺「2019年・上半期の外国語映画は、ダントツでアニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』ですよね。なかでもスゴかったのは音楽。今はそれこそアプリとかを使って誰だって寸分狂わず、映像のタイミングにあわせて音楽をつけることができる。でも、『スパイダーバース』は手動なんですよね。スクラッチの世界チャンピオンのDJが、映像を見ながら音楽をあてこんでいったという」

斉藤「三宅唱監督と一緒のスタイルやね。あの人は、DJに映像を観せながら即興的に入れてる。まあ昔、マイルス・デイヴィスやニール・ヤングもやってたけど」

田辺「ジム・ジャームッシュ監督の『デッドマン』(1995年)ですよね! 人間の手で入れる音楽っていうのは、映像ソフトと違ってちょっとしたズレができるけど、それが体感として心地よいグルーヴを生むんやと改めて思いますよね」

春岡「『スパイダーバース』は多重異世界というかさ。それとも音楽はうまくマッチしてたよな」

斉藤「そうそう。多元世界SFモノとして、あれほど出来がいい映画はあまりなかった」

田辺「しかも、タツノコプロ的なキャラクターからロールシャッハまで出てきて。しかも、それぞれが自分が暮らす世界でスパイダーマンをやってたという設定。これはシビれますよね」

春岡「あのクロスオーバーはこれまでなかった。世界中のアニメ好きが狂喜乱舞したよな」

田辺「で、エンドロールが長い! 終わらないかと思ったくらい(笑)。最初から最後までかっこいい」

斉藤「観るまで知らんかったんやけど、脚本とプロデュースにロード&ミラー(『LEGO ムービー』などを手掛けたフィル・ロードとクリス・ミラー)が入ってるねんな。それを見て、このクオリティにも納得したわ」

田辺「アメコミっていうのをアニメーション映画に落とし込むっていう。版ズレを生かした表現とか、まさにコミックスですよね」

春岡「コミックスを映像でやりました。誰もやってないけど、やろうと思ったらできるんですよ、ってことを完全に示したよな」

田辺「アニメーションというのは最新鋭の技術がハッキリとわかるジャンルだから、今一番新しいものがコレなんだと本当に思いましたよね」

斉藤「あれを見せられたら、誰も文句いえない」

春岡「わざわざアニメーション映画にしながら、紙の質感をやろうとするという。紙で育った人間にはもう、なんだアニメをやろうと思えばできるんだ、ってビックリしたはず」

斉藤「たぶん今年の映画祭はどこもかしこも『スパイダーバース』。細田守監督もノミネートされているけど、『スパイダーバースでしょうがない』ってテレビで言ってた。『これは負けた!』っていう、作り手にとってもとんでもないレベル」

田辺「いちいち芸も細かいし、テクニックもオタク受けするし。僕はもうダントツで『スパイダーバース』です」

斉藤「ホント、もう参りましたって感じ。どうすんねん、トム・ホランド(実写版スパイダーマン役)ってぐらい」

春岡「あと、アルフォンソ・クアロン監督の『ROMA/ローマ』は?」

Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』

田辺「2018年の下半期で結構しゃべりましたよね。あのときはNetflixだけの公開(12月配信)で、今年に入ってから劇場で公開されるようになって」

春岡「俺はそのとき観てなかったから、映画館で観てさ。いや、これは素晴らしいと思って。まあ、そのあたりは前回の記事を見てもらえればいいか」

次頁:「本気出したらこんなことになるんや!」(田辺)

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