池松壮亮「新しい時代への祈りも込めて」
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作者自ら「暑苦しい」と評する画で、不器用ながら遮二無二に人生を歩む主人公・宮本の生き様を描いたマンガ家・新井英樹の『宮本から君へ』。この伝説的コミックのドラマ、映画化に挑んだのは、俳優・池松壮亮と真利子哲也監督。約8年前から浮かんでは消え、また浮かんでは、を繰り返してたというプロジェクトだったが、映画ではほとばしるような「熱さ」とともに、その世界観を見事なまでにスクリーンに映し出した。原作者が「最高の贈られ物」と絶賛した本作について、池松壮亮に話を訊いた。
取材・文/ミルクマン斉藤 写真/Ayami
「僕は宮本のようにならなかった、なれなかった」(池松壮亮)
──映画『宮本から君へ』、感服いたしました。(前篇に当る)テレビシリーズからずっと拝見していましたが、12話全部集めて煮詰めたくらいの熱量がスゴくて(笑)。
そうですね(笑)。語弊を恐れず言うと、宮本のなんたるかが後半戦に詰まっているような気がしますね。
──テレビ版の第5話くらいで蒼井さんの靖子はすでに出てきてましたよね。でも残り回数少なくなって「あ、靖子との話までいかないんだ」と思っていたら、今回の映画化が発表されて。テレビシリーズを作っているときから、靖子の話は別でじっくりやろうということになっていたんですか?
そもそもの企画自体がドラマと映画で、ということだったので。じゃあ『サラリーマン編』はドラマで、ということになっていました。
──原作も語り口が一人称から三人称になることもありますし、そういうことだったんですね。それにしても今回、真淵拓馬との決闘というアクション・シーンがありますけど、それだけじゃなく、蒼井優さんとのセリフ・バトルこそがアクションじゃないかと思わせるほどの熱量の高さがあります。池松さんも途中、本当に声を枯らしてたじゃないですか。
もう、3日目くらいで枯れてましたね(笑)。
──いやぁ、すさまじいですね。よくこれだけのテンションを保持できるなあ、と。
そうなんですよね。宮本をやる上で何がキツかったかというと、あのギリギリの精神状態をいかに1カ月くらい保つかという。これが一番大変だったことでしょうか。
──でも、それは蒼井さんもですよね。高い熱量を保つというのが。やはり撮影中はお互いに鼓舞し合うというか。
だいぶプッシュし合えたというか、もともと関係性があったからこそな部分もありますし。去年、塚本晋也監督の映画『斬、』でがっつりやらせてもらう前から何度か共演してましたし、なにかと接点が多かったので。あとは、蒼井さんに関してはそのへんの俳優よりも男前なところがあるので、そういう人とこれをやるというのは力になりますね。
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──塚本組、真利子組と高カロリーな映画監督作への出演が続いて、しかもこの題材ですからね。新井英樹さんの原作はテレビに入る前からご存じだったんですか?
もともとは知らなかったんですけど、この企画は僕が22歳くらいのときからあるんですよ。そのときに読みました、僕は。今29歳なので、7年前かな? だいぶ時間がかかってるんで、もうダメか、もうダメかということがあったんですけど、やっとこういう形にできました。
──僕はこの原作、コミックが完結してから読んだんですけど、それももう30年くらい前になります。池松さんはこの宮本というキャラクターにかなり入り込むことができたと思いますか? ある意味、自意識の空回りが続くキャラですし。
うーん・・・なんでしょうね? 最初に原作を読んだとき、22歳の池松青年は「自分のために書かれたんじゃないか!?」と錯覚するくらいの衝撃があったんですよ。とはいえ、僕は宮本のようにならなかったというか、なれなかった。あそこまで自我を貫き通して何かを達成しようとしたり、向上しようと努めてこなかったというか。
──なかなか、あの生き方はできないですよね。
もっともっと社会に順応しようとしたし、相手の心も自分の心も殺しながら・・・なんて言うんですかねぇ。こう、処世術みたいなことばかりを学んで、自分の心とは裏腹に生きた部分がある。僕だけじゃなく、みんなもあると思うんですよね。だから、宮本になれなかった自分として、もう一度、宮本と向き合ってみるということが大切なんじゃないかなと思ったんです。
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──それに今回、やはりこの作品は、女性というものに対してのリスペクトに満ちているなあと。一見、セリフは「俺が守ってやる」というマッチョな言葉になっちゃうんだけれど、その裏には女性への信頼というか敗北感というか、「あなた方は絶対的に私より強い」という敬意があると思うんですよ。
新井さんは基本的にフェミニストだと思いますね。ドラマでもこの映画でも扱ってない章で、宮本の隣に入院してくるフェミニストのおじいさんとのエピソードがあるんですけど、あそこは結構代弁しているような気がしていますね。どのキャラクターも新井さんが描く男はかなりフェミニストだと思います。
──今回、井浦新さんがかなりちゃらんぽらんな役で出てきますけれども(笑)、彼さえそうですもんね。そういうところにやさしさがあるし、どれだけ強い言葉でバトルしても、やっぱりそこには可笑しみがある。
いやぁ、ありがとうございます。そういうことを糸口に何かしゃべれたらいいんですけど、伝えるのが難しいんですよね。そのやさしさとか、本当は誰かに幸せであって欲しいという祈りのような部分を見い出していきたいんですけど、ままならず公開です(苦笑)。
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