今泉力哉監督「あの笑顔は演出じゃない」

「僕の方が脚本の時点で見えていなくて」(今泉監督)
──読んでみたら、原作では多部未華子さん演じる紗季役なんてすごく小さくて。それは最初の短篇『アイネクライネ』があの2人の話だったのが大きかったんですか?
連作として完成した原作を全部読んで思ったのは、最初にあった短編『アイネクライネ』に入っていた劇的な出会いというか。どういう出会い方かよりも、全体を貫く一番のテーマは、その『出会った人が後々、その人が良かったと思えるか』、だと思って。
──その通りですね。
で、それを突き詰めようと思っていたんですけど、そのテーマには穴があって。その『後々』がいつなんだろうっていうのが自分のなかで疑問として出てきて。
──高校生の美緒(恒松祐里)に「後々っていつ?」ってあっさり喝破させるのが面白かったです。
彼女にあれを言わせたのは、あえてですね。「高校生にとっての後々っていつ?」ってなりますから。このテーマではもうひとつ、藤間さん(原田泰造)の人生がある。奥さんと出会った瞬間。結婚したとき。別れたとき。現在。・・・劇中で藤間さんは、「その人でよかった」って言ってるけど、訊くタイミングによっては違うかもしれないし。『後々』という時間の不特定さも、やっぱりひとつの軸になるんじゃないかと思って。

──今回の映画は「出会い」がひとつのテーマになってますが、登場人物はというと、その件についてみな漠然としていて何が正解か分からない。果たして、その彼氏・彼女らしき人に会ってみたところで、一様に迷うというのが繰り返されていく。『アイネクライネナハトムジーク』といえばモーツァルトのセレナーデですけど、この映画はまるでその第四楽章のロンド形式で。
回ってますよね。
──何度かペデストリアンデッキ(広場と歩道橋を兼ね備えた建築物)が出てきたり、「怖い人の御曹司」の話とかシチュエーションも回っているし、色紙とか木の枝とか小物も全部回っていく。輪舞のような感じで、いくつかの循環が非常に綺麗な円を描いて心地いいんですよね。
実は伊坂さんの小説の一番の魅力はそこだと思うんです。それを映像にできたのはすごく良かったなと思うし、伊坂さんが初号で観たときに「チャーミングな映画ですね」と言ってくれて。でも、やっぱり脚本の鈴木謙一さんの力が大きいですね。僕の方が脚本の時点で、(エピソードや小ネタの)バランスが見えていなくて、もっと変な絡みをやろうとしたり。例えば、もっと(ボクシング王者・ウィンストン小野の)サイン色紙がいろんな人の手に回って・・・とかやりたくなってたんですけど、鈴木さんが冷静に『そこまでやらなくても人が繋がってるから、要らないかも』と言ってくれて。
──完成作では10年後の塾のシーンで再び出てくる程度ですもんね。でも、あれで佐藤のいい人っぷりが浮かび上がる。
群像劇って、情報の足し引きだから、劇中の人物と同時に知ることもあれば、お客さんが先に知ってて劇中の人物は知らないこともある。塾のシーンの場合は、お客さんだけが知ってるわけだから、映画に混ざっていけるというか。ああいう時間っていいな、と思って描いてましたね。

──それにしても、佐藤を演じた三浦春馬さんの芝居は見事でした。恋人・紗季(多部未華子)の気持ちに気づかずバスに乗せてしまい、会心の笑顔を見せる。あれはなかなかできないですよ。
あの笑顔は演出じゃないんです。俺は最初、「ちょっと待ってくれよ。紗季をバスに乗り込ませたあと、佐藤はまだ結婚のOKももらってないし、なにも解決もしてない。なのに、そんな100%の笑顔で見送れるのか」と思っちゃって。三浦さんに「佐藤ってこんなに笑顔になりますかね?」って訊いたら、「いや、佐藤はなるんじゃないですかね」と。たぶん、俺の方が佐藤をまともな人間だと思ってたんですね。でも、佐藤ってあそこで紗季をバスに乗せちゃうくらいだから・・・。
──紗季はもう気持ちを伝えようとしているのに、佐藤は追いつけたことに満足しちゃって、無垢な笑顔で見送るという(笑)。でもあれは、まさにキラースマイルですよ。
だから撮影したときは、俺は納得してなかったんですけども、編集で見たときに「あ、間違いない。これで良かったんだ」と。公開前に試写で観てくれた人の話を聞いても、あのときの佐藤の笑顔をみんな覚えてるし。あれはやっぱり三浦さんですよね。あの、くしゃっとした笑顔。あと、終盤の2人のやりとり「ただいま」「おかえり」はすごく覚えています。脚本の「ただいま」「おかえり」にプラスして、さらに「おかえり」「ただいま」と返すというやりとり。
──もう、それで充分って気になる(笑)。
ですよね(笑)。そのバスのシーンの前、三浦さんがかなり芝居を固めてきてた感じがあって。多部さんがせっかく良い表情、良い芝居で受けているのに、三浦さんが多部さんを見れてない気がしたんです。で、「もっと多部さんを見て、頼った方が楽ですよ。多部さんをもっと使ってください」って話したんです。三浦さんはそれを覚えていて、それをきっかけに「ほかの現場でも、相手があるという意識をもう一度きちんと持つようになりました」って話をいろんなところでしてくれてて。
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