世界遺産・薬師寺でモータウン特別ライブ

2019.11.5 22:30

世界遺産「薬師寺」でおこなわれれた『モータウンオーケストラコンサート』(3日・奈良市内)

(写真5枚)

古都・奈良に悠然と佇む世界遺産「薬師寺」(奈良市西ノ京町)と、世界でもっとも知られるソウルレーベルの名門「モータウン」。そんな奇跡的なコラボ企画が11月3日、同寺にておこなわれた。レーベル設立60周年を記念した『モータウンオーケストラコンサート』だ。

1959年、米国・デトロイトで設立された「モータウン・レコード」。そこから世に出たミュージシャンは、マーヴィン・ゲイ、スモーキー・ロビンソン、シュープリームス、ザ・テンプテーションズ、ジャクソン5,そして、スティービー・ワンダーと、枚挙に暇がない。なにより、ソウルミュージックを大衆音楽にまで引き上げた「モータウン・サウンド」と呼ばれる音楽性は、今も世界中の人々を魅了し続けている。

この日は、「モータウン」が生んだ名曲の数々をフルオーケストラとともに再現したスペシャル企画。シンガーには、ジャクソン・ファミリーの三男ジャーメイン・ジャクソンをはじめ、現レーベルを代表するソウルシンガーのBJ・ザ・シカゴ・キッド、かつて14歳で衝撃のデビューを飾ったシャニース、そして、アレステッド・デベロップメントのスピーチという錚々たるメンバーが、「薬師寺」の大講堂前特設会場に降り立った。

「モータウン」の今を代表するシンガーのBJ・ザ・シカゴ・キッド(3日・奈良市内)

最初に登場したのは、栁澤寿男が指揮するビルボードクラシックスオーケストラ。シュープリームス『ベイビー・ラブ』、テンプテーションズ『マイ・ガール』などのモータウンメドレーで幕開け。続いて登場したBJ・ザ・シカゴ・キッドも、スモーキー・ロビンソン&ミラクルズ『ウー・ベイビー・ベイビー』、ザ・スピナーズ『イッツ・ア・シェイム』のカバーを熱唱。珠玉の名曲に、モータウンの分厚すぎる歴史を感じさせた。

圧巻の歌声で観客の度肝を抜いたシャニース(3日・奈良市内)

そして、会場がヒートアップしたのが、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルが1967年に発表した『エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ』を、シャニースとスピーチがデュエットした場面。50年を経てもまったく色褪せない名曲に、客席からは感嘆のため息が漏れるほど。その後、シャニース自身の大ヒット曲『アイ・ラブ・ユア・スマイル』を披露。上空の闇を突き破らんとするパワフルな歌声に、オーケストラからも拍手が贈られた。

そして、オーケストラのメドレーを挟んだ後、スピーチが再び舞台に登場。モータウンの屋台骨を支える人気を誇った3人の人気シンガー、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ『トラックス・オブ・マイ・ティアーズ』、マーヴィン・ゲイ『ホワッツ・ゴーイン・オン』、スティービー・ワンダー『迷信』を熱唱。「ヒップホップの異端児」なイメージのスピーチだが、この日はモータウンのクラシックを噛みしめるように歌っていた。

会場を総立ちにさせたスピーチ(3日・奈良市内)

大トリで登場したのは、ジャクソン5では実弟マイケル・ジャクソンと人気を二分したジャーメイン・ジャクソン。自身のヒットナンバー『レッツ・ゲット・シリアス』でさっそく客席のハートを掴むと、マイケルの名バラード『ベンのテーマ』、ジャクソン5メドレー(『アイ・ウォント・ユー・バック』『ABC』『ストップ・ザ・ラヴ・ユー・セイヴ』)で客席を総立ちにさせ、ラストはジャクソン5『アイル・ビー・ゼア』で締めくくった。

ジャクソン5の名曲を惜しげもなく披露したジャーメイン・ジャクソン(3日・奈良市内)

1300年の歴史をもつ世界遺産「薬師寺」でおこなわれた、この一夜限りのアニバーサリー・コンサート。人種や宗教観はまったく異なるものの、音楽史に燦然と輝く「モータウン」の名曲たちが会場に一体感をもたらした。また、出演アーティストら全員が、大講堂の仏様に一礼し、リスペクトを表する姿も印象的だった。

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