京都で活動する若手の登龍門、次代を担う新鋭40名の作品展

2020.2.6 06:00

最優秀賞を受賞した、小嶋晶《自分になる》

(写真3枚)

京都を拠点に活動する若手作家を紹介する『Kyoto Artfor Tomorrow 2020-京都府新鋭選抜展』が、「京都文化博物館」(京都市中京区)の3階展示室でおこなわれている。今年の選抜作家は40名。ジャンルは、絵画、立体、版画、染色、複数のジャンルを併用した表現など多岐にわたる。

最優秀賞に輝いたのは小嶋晶の《自分になる》。ふたつの映像と積み木状のオブジェから成り、社会的マイノリティがアイデンティティを確立する過程で生じるさまざまな問題を扱う。小嶋はこれまで「生とは」をテーマに、自分の欠損を補完するような作品を作ってきた。本作ではユング心理学の「シャドウ」という概念がキーワードになっている。「シャドウとは、自分が選択しなかった生き方や価値観のことです。それらを取り戻していくことによって自分が本来あるべき姿に戻れるのでは、という思いがあり、インタビューから展開してこの作品ができました」と話す。

優秀賞を受賞した、菊池和晃《円を描く》

優秀賞は菊池和晃の《円を描く》。墨を浸した筆とハンドルの間に幾つもの歯車をかませた装置的な作品で、ハンドルを回すと綺麗な円が描ける。菊池いわく「ひとつの円を描くのにハンドルを6250回も回さねばなりません。徒労のような作業と美しい円の対比がテーマです」。墨線の円は禅宗の円相(悟りや真理の象徴)を思わせる。だとすればハンドルを回す行為は座禅や写経のようなものか。

彼ら以外も力作揃いで見応えはたっぷり。次代を担う新鋭たちを、いち早くチェックしておきたい。なお、京都文化博物館の別館ホールにて、特別に出品される「宮永愛子『うたかたのかさね』」もお見逃しなく(こちらは入場無料)。彼女もこの選抜展出身で、樹脂を用いた作品で知られる有名作家だ。会期は2月9日まで、料金は一般500円。

取材・文/小吹隆文(美術ライター)

『Kyoto Art for Tomorrow 2020-京都府新鋭選抜展-』

期間:2020年1月25日(土)~2月9日(日)※月曜休
時間:10:00~18:00(金曜~19:30)※入館は閉館30分前まで
会場:京都文化博物館 3階展示室(京都市中京区三条高倉)
料金:一般500円、大学生400円、高校以下無料
※別館ホールの「【特別出品】宮永愛子「うたかたのかさね」は入場無料
電話:075-222-0888

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