閉館する映画館・布施ラインシネマ、地元民から惜しむ声

2020.2.24 17:00

東大阪市唯一のシネコン「布施ラインシネマ」(東大阪市足代新町7−7−4)

(写真7枚)

長年地元民に愛され続けてきた映画館「布施ラインシネマ」(大阪府東大阪市)が、2月29日をもって閉館。22日には同館にゆかりのある作品が上映され、多くのファンが集まった。

同館を運営する不動産の岡島興業は、1933年に映画事業を始め、布施に「昭栄座」を開館。それを皮切りに「東大阪劇場」「布施リオン座」を運営し、1997年にリオン座を改装して「布施ラインシネマ 」と名称を変えリニューアルオープン。現在は7スクリーン1145席を擁する映画館だ。

劇場の壁は来館者が書いた「好きな映画のタイトル」で埋めつくされている

2012年にデジタル上映システムを導入したが、同館の掛谷嘉昭シニアディレクターは「フィルムからデジタルになって便利になりましたが、設備投資がだいぶかかる。個人の劇場ではなかなか厳しい」と、閉館という選択に至った現状を話した。

22日におこなわれたのは、南インド・タミルナドゥ州のスーパースター・ラジニカーント主演のインド映画『ペーッタ』のマサラシステム上映。紙吹雪やクラッカーOKのマサラ上映は、いまやインド映画のみならずさまざまな作品でも実施され、その名前は広まりつつあるが、2001年に日本で初めて実施したのが、系列の映画館で支配人を務めていた掛谷さんなのだ。

『ペーッタ』マサラ上映後、「私は劇場の人間としてマサラ上映をみなさまに喜んでいただければとご協力させていただいただけ。最後にみなさんに掃除をして帰っていただけたら幸い」と挨拶する掛谷さん(22日)

当時掛谷さんにマサラ上映を提案したのが、今回の『ペーッタ』マサラ上映の主催で日本語字幕も担当するラジニ.jpの安田英俊さん。「当時、映画を観ながら歓声、ましてや紙吹雪、クラッカーなんて・・・と、どこも受け入れてくれなかったマサラ上映を、一発でOKしてくださった。掛谷さんがいなければ今のマサラ上映はないと思います。閉館が残念です」と、最後を惜しんだ。

映画『ペーッタ』マサラ上映に集まったファン(22日)

ラジニファンで同館の長年の利用客だったという50代の男性は、「約40年前、この場所で高校一年生のときに『セーラー服と機関銃』を観てから、ずっと通っていました。布施に来ることが激減してしまうね」と話し、20代の女性も「家の近所で週末はよく来ていました。初めて映画を観たのもここ。寂しい」と残念がった。

29日まで、開業からの87年間にちなんで87本の名作を上映する「ラストショー」が開催中(1000円均一、『ドラえもん のび太の宝島』は500円)。掛谷さんは「ラストショーが始まった序盤は少し寂しい状況だったんですが、少しずつ増えてきました。最後に名作を楽しんでほしい」と呼びかけた。

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