評論家鼎談、外国語映画19年下半期ベストと20年注目作は?

2020.3.7 21:00

『ジョーカー』(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

(写真5枚)

Lmaga.jpの恒例企画となった、評論家3人による映画鼎談。数々の映画メディアで活躍し、本サイトの映画ブレーンである評論家 ── 春岡勇二、ミルクマン斉藤、田辺ユウキの3人が、「ホントにおもしろかった映画はどれ?」をテーマに好き勝手に放言。見逃したのならば観ておくべき、2019年・下半期公開の外国語映画、そして2020年の注目作についてもトーク。

文・編集/田辺ユウキ

「ホアキンがあそこまでやってくれるとは」(田辺)

田辺「『ジョーカー』はすばらしかった。闘争心を煽られましたね!」

斉藤「だからヒットしたんだけど、すっげー危ない映画でもある。ちょうど観たときに香港の騒動がすごいことになっていて、僕も今こんなの公開したら火に油を注ぐようなもんだな、と思ったもん」

田辺「(イギリスの60年代に登場したハードロックバンド)クリームの代表曲『ホワイト・ルーム』が映画史上でもっともカッコいい使われ方をしましたね。ジョーカーを後部座席に乗せたパトカーを背後からカメラが追っていく。そして曲が流れて、外の暴動を窓から見るジョーカーの表情。あんな美しいシーンありますか?」

斉藤「ヒルドゥル・グーナドッティルの音楽も、弦と打楽器のミニマルな刻みで不安をじりじり煽っていく。あと、衣装デザインね。PTA(ポール・トーマス・アンダーソン監督)の映画もやっている、マーク・ブリッジズがすばらしいんだよ。ストーリーもあれだけ情動を煽るっていうのはなかなかない。すごい冷静に作っているのにさ。監督のトッド・フィリップスがついに本性を剥き出しにしたということやね。衣裳とか美術とか、全部アカデミー賞取ったらいいと思った」

田辺「で、ホアキン・フェニックスは、先日のアカデミー賞でも最優秀主演男優賞を受賞。ホアキンがあそこまでちゃんとやってくれるとは。あの人だからですよね、本当に」

斉藤「まあ、あえて言わせてもらうと、彼にとっては通常運転なんだよね。PTAの『ザ・マスター』とか観ると、ホアキンにとってはそれの延長線上でしかない感があるよな」

春岡「ジョーカーが、いつも不安で可哀想なんだよな。観ていてハラハラして、狂気が気の毒になっちゃう。ここまでやってくれたら言うことないです」

斉藤「『病気や、病気や』と自分でも思っていて、実際に病気で。そういう生き方を自分でも律してきたのに、あるとき自制してきた自分が間違っていたんやと気付くという」

春岡「そう、悲劇だと思っていたら、実は喜劇だったっていうね。なんて痛ましい」

斉藤「つまり『タクシードライバー』(1976年)と『キング・オブ・コメディ』(1982年)なんですよ。だから、ロバート・デ・ニーロが出ている(編集部注:両映画で主演)」

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