パンクが世界を変えた瞬間、今こそ観るべき映画『白い暴動』

約10万人の観客を前に『WHITE RIOT(白い暴動)』を演奏するThe Clashの姿が写し出されたメインビジュアル photograph by Syd Shelton
人種差別に対して「ロック」で対抗した数人の若者たち
「英国病」「ヨーロッパの病人」と呼ばれるほどに深刻な経済不振に陥り、かつて労働力不足を解消するためにカリブ海、アフリカ、アジア諸国から安い賃金で呼び寄せた移民たちから職を奪われてしまうという不安の高まりから、排外主義へと傾いていた70年代のイギリス。
そこで台頭していたのが白人至上主義を唱える極右の国民戦線(ナショナル・フロント、通称NF)であり、労働党に政権を奪われた保守党のイーノック・パウエルも「移民を全員国外に出すべきだ」といった極端な主張で支持を集めていた。

音楽シーンに目を移すと、1975年11月にセックス・ピストルズがライブ・デビューしてパンクの萌芽が認められる一方で、翌年にはデヴィッド・ボウイがファシズムを称賛する発言をし、黒人ブルースから多大な影響を受けたうえに1974年にボブ・マーリーの名曲『アイ・ショット・ザ・シェリフ』のカバーで全米チャート1位を制したエリック・クラプトンは、自身のステージでパウエル支持を表明して彼への投票を呼びかけ、国民戦線のスローガンだった「キープ・ブリテン・ホワイト!(英国を白く保とう)」を叫ぶ始末・・・。
そのクラプトンの発言に反対する記事を音楽誌に投稿し、自費出版の雑誌『テンポラリー・ホーディング(仮の掲示板)』を発行して人種差別に抵抗する活動を展開したのがRARを創設したレッド・ソーンダズらの若い芸術家たちだった。

パンクとレゲエ、白と黒を結びつけたRAR
そんなRARの動きにミュージシャン側から賛同したのが、当時にピストルズと並ぶパンク・ムーヴメントの旗手として人気を集めていたザ・クラッシュや、メッセージ性の高い歌詞と骨太なサウンドで支持されていたトム・ロビンソン・バンドといった、当時気鋭のバンドたち。
特にクラッシュは、スティール・ドラムのバンドなども華やかに街へと繰り出すカリブ海出身の移民たちのお祭りとして知られる『ノッティング・ヒル・カーニヴァル』で1976年に起こった暴動を題材とした『白い暴動』で翌年にシングル・デビューを飾るように、この映画で描かれている出来事の中心的存在。
加えてRARは、のちにプロデューサー/エンジニアとしても活躍することになるデニス・ボーヴェルが在籍したマトゥンビや、ジャマイカ移民2世のメンバーたちによって1975年に結成されたスティール・パルスといった、差別される側にあったUKレゲエの先駆的なバンドとも繋がりを深め、人種やジャンルを超えた運動の連帯を強めていく。
そのあたりの経緯を、残された映像や写真、当時を振りかえってのRARや関わったバンドのメンバーらの証言をミックスしながら描いていくわけだが、DIYで発行されていた『テンポラリー・ホーディング』誌の粗い紙の質感やデザインへの敬意に満ちた映像編集が細かく施されている点も見どころとなっている。
映画『白い暴動』
出演:レッド・ソーンダズ、ロジャー・ハドル、ケイト・ウェブ、ザ・クラッシュ、トム・ロビンソン、シャム 69、スティール・パルス
監督:ルビカ・シャー『Let‘s Dance: Bowie Down Under』※短編
配給:ツイン
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