休館中の美術展を動画でネット配信、ライブ感がハンパない

2020.4.26 09:00

出川館長自らがご案内。右が橋本麻里さん。当たり障りのない台本で進むテレビの美術番組にはない、生のリアクションがおもしろい

(写真3枚)

新型コロナウイルスの影響で、ギャラリーや美術館が軒並み休館中だ。観客としても寂しい限りだが、誰の目にも触れずに展覧会が終わってしまうのではもったいない、と無人の美術館からライブ配信する試みが始まっている。

「インターネットミュージアム」では、横浜で開催の「バンクシー展」も

休館中の美術館に呼びかけて、無償で動画を制作。ライブ中継をおこなっているのが『ニコニコ美術館』(ドワンゴ)。美術品に限らず、歴史的に価値のあるもの、クリエイターの個展など、さまざまな分野の企画展を2012年から、取り上げている。

『ニコニコ美術館』は、専門家のナビゲート、美術館の担当者の解説で展示をじっくりと鑑賞できる内容で、中継のあともアーカイブとして鑑賞ができる。

たとえば「大阪市立東洋陶磁美術館」(大阪市北区)の『竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション メトロポリタン美術館展』のライブ中継は、橋本麻里(美術ライター、永青文庫副館長)さんと、出川哲朗館長、担当学芸員が、2時間52分にわたって館内を練り歩いた。打ち合わせも台本も、ほとんどないようで、アドリブでの質疑応答、手持ちカメラで撮りっぱなしの映像が、超ゆるゆるムード。しかもコメントが画面上をダラダラ流れており、これが大いに邪魔なのだが、慣れてくると、大勢でスポーツを一緒に観るパブリックビューイングのようなライブ感がある。

ほかに、さいたま市大宮盆栽美術館『春の花もの盆栽展』(英語字幕付き)、京都国立近代美術館『チェコ・デザイン 100年の旅』などがライブ中継されており、マニアックな展覧会ほど、担当者の熱気とプロの解説のおもしろさが際立つ。ライブを見ていた美術ファンからのコメントも相まって、あたかも「ツウのお友達に案内してもらう」ような感覚で美術展が身近に感じられる。いまは窮余の策としておこなわれているライブ配信ではあるが、新たな鑑賞サポートツールとして、コロナ終息後も配信を続けて欲しい。

日本のミュージアム情報サイトとして最大級の「インターネットミュージアム」。こちらでは、文化施設や展示を専門家が案内する「取材レポート」と、それに連動した動画をユーチューブで配信する。その数、なんと4000本以上。休館で観られなかった展覧会の情報も多数アップされている。公式サイトでは「新型コロナウイルス感染症対策により開幕延 期・中止になった展覧会」も随時レポートしているので、今後は、再開情報にも注目したい。

海外の美術館巡りも、しばらくはままならないが、ワールドワイドなアートコンテンツが超充実の「Google Arts & Culture(グーグルアーツアンドカルチャー)」で、世界のアートを楽しむことができる。登録されているミュージアム館内、コレクションを閲覧できるほか、居ながらにしてストリートビューで、歴史遺産からニューヨークのストリートアートまで眺められる。そして、デジタルならではなのが、高画質&ズームで観る名画。フェルメールの作品『真珠の首飾りの少女』を、画像拡大して絵の具の割れ目まで克明に鑑賞できるとは、、、、鳥肌ものである。

ユニークな日本のアートサイトもご紹介。「HASARD(アザー)」は、世界の名画から現代の作家までの作品画像を、独自にキュレーションして「展覧会」として観せるオンライン美術館。観る人も一緒に「創り、運営し、楽しむ」がコンセプトで、協賛で運営されている。誰もがキュレーターになれるオンライン美術館の未来のスタイルかもしれない。

取材/沢田眉香子

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本