「学生さん、せめてご飯はうちで食べて」貼り紙が話題

京都・茶山駅近辺の居酒屋「づぼら」
「バイトも無く、仕送りも大変な学生さんはせめてご飯だけはうちで食べて行って下さい!」。京都・茶山駅近くの居酒屋の店前にはられた貼り紙(張り紙)がSNSで話題となっている。内容は学生に無償でご飯を提供するという取り組みだ。
このツイートは28日、居酒屋「づぼら」をひとりで営む女性店長の娘である吉田なを美さんが、母の取り組みを応援しようとつぶやいたものだった。飲食店も大変な時期で、この取り組みを実施したきっかけについて、吉田さんにお話を伺った。
「もし娘が学生だったら・・・」母の思い
「づぼら」は吉田さんが中学生のときに、お母さんがひとりで開業。それ以来、地域密着型の居酒屋として、子ども2人を育てながら20年近く営んでいる。最初は小・中・高等学校が休校になったことで「給食が無くなって困っている家庭があるのでは」と、3月上旬から子どもたちに無償でご飯を提供し始めた。
その後、新型コロナウイルスの感染がどんどん拡大し、自粛要請でバイトも無くなってしまったうえに、ゴールデンウィークに支援もなく帰省自粛を強いられて困っているであろう大学生たちに、「ご飯くらい栄養のあるおいしいものを食べて欲しい」と、対象を大学生まで広げて提供したという(持ち帰りも可能)。同店の近辺は京都大学や京都芸術大学の学生が多い。
「うちは母子家庭でいわゆる貧困家庭でした。でも、母の頑張り、沢山の方々の支えで私も大学に行き、留学までしました。私もバイト三昧で苦労してやりくりする生活を嫌というほど知っていますし、子ども時代の貧しい生活も覚えている。母も『もし私が学生だったら』と思って、この施策に取り組んだのだと思います。この施策にたとえ数人でもいいから心細い思いをしている人の助けになれたら幸いです」と吉田さん。
「個人のできる単位で助け合いができたら」
飲食店ももちろん大変な思いをしているなか、「無償」という勇気のある取り組み。もちろん「づぼら」も売上は半減しているのだという。吉田さんは、「これはなんでも無償でやりましょうという呼び掛けではないです。少しでもいいので、個人個人のできる単位で助け合いをしていきましょう」と呼びかける。
これまでにない過酷なゴールデンウィークが始まり、心が休まらない人も多いだろう。こうした助け合いの輪を少しずつ、広げていきたい。
取材・文/小田切萌
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