コロナに負けない「リモート寄席」、上方講談師の熱弁を堪能

2020.5.13 08:00

「ZOOM寄席」トークコーナーの様子。(上段左から)講談師・旭堂南龍さん、旭堂南陵さん、旭堂南也さん、(下段)旭堂小南陵さん

(写真2枚)

日本で唯一の講談の劇場「此花千鳥亭」(大阪市此花区)ではコロナ禍による逆境のなか、4月からWEB会議ツールを使った『ZOOM寄席』の有料配信を実施。リモートならではのハプニングがありつつも、客からの反応は好評だという。

バンバンと張り扇で釈台を叩き、独特のリズミカルな調子で軍記物などを語る講談。400年以上前からの伝統話芸で、現在、上方の講談師は約30人のみ。「定期的に講談が楽しめる場を作りたい」との思いから、講談師の旭堂小南陵さん、旭堂南龍さんが中心となり、2019年1月に同劇場を限られた予算のなかDIYでオープンさせた。

今年1周年を迎えたばかりだが、現在は劇場公演ができず厳しい状況に。南龍さんは「何かと価値観が変わってしまったので生き残るために頑張らねば」という思いから、客と芸人の「3密」を避ける『ZOOM寄席』を企画した。

自宅にいる客が事前に木戸銭(料金)を払い、専用URLでリアルタイムで講談や落語を視聴。実施されてからは、まだ映っていないと思いこんでいる演者の顔が配信されたり、長い間マイクが前後ろ逆なのに気がつかなかったというリモートならではのハプニングもあったというが、客からの反応はおおむね好評だ。

配信ならではの「自分だけに語りかけられているようで没頭できる」という反応や、「ライブの迫力とは違うので、早く直に観に行きたい」とかえって劇場再開を楽しみにする声もあがっている。

「聞き取りやすいように普段よりはゆっくりしゃべっています。先人たちが工夫して残していただいた心に残る物語を楽しんでもらいたい」(南龍さん)、「ライブ配信ではお客さまとのチャットや音声参加などの交流も念頭に入れ、改良していきたい。講談は究極の芸能のひとつなので守っていきたい」(小南陵さん)と、歴史ある講談を守るために、最新テクノロジーを駆使する。

また収束後も、遠方の客のため、配信は劇場再開後も続けていく予定とのこと。ほかにも、講談を無料で楽しんでもらえるよう、YouTubeチャンネル『テレワーク寄席』や毎週月曜に更新される『講談ひるず』も配信している。

取材・文/塩屋 薫

「此花千鳥亭」

住所:大阪市此花区梅香3-20-17
電話:06-7708-0754

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