大阪の老舗つまようじ屋開発「非接触棒」予想以上の注文に驚き

2020.5.14 20:00

「つまようじ屋の非接触棒」(568円・税別)

(写真7枚)

新型コロナウイルスの蔓延により「触る」ことに敏感になっていませんか。濃厚接触はもちろん、知らない人が触った場所は触りたくない・・・! そんな思いに応え、大阪・河内長野で国産爪楊枝の製造販売をおこなう「菊水産業」(本社・大阪府河内長野市)から、『つまようじ屋の非接触棒』が誕生した。

パッケージには「さぁ思う存分つつくがよい」との文字。創業60年の歴史を持つ企業に何があったのか? 開発をおこなった同社専務取締役の末延秋恵さんに電話でお話をうかがった。

国内に2社しかない貴重な国産つまようじ(こけし楊枝)を製造する「菊水産業」。北海道産の白樺材を使ってつまようじの製造をおこなっており、今回の『つまようじ屋の非接触棒』は、湿気てしまい爪楊枝になれず、燃やすしかなくなった北海道産白樺材を再利用して生まれたという。

素材は、北海道産の白樺材。非プラスチック製で、ご使用後は燃えるゴミとして出すことができる

「コロナで弊社も打撃を受けていて、売上は5割減です。こんな最中に何かできないかなと考えていたところ、ニュースで武漢の人たちがつまようじをエレベーターに設置してボタンを押している様子を見て、『これはつまようじ屋としてほっておけない!』と思いまして(笑)。湿気てしまって爪楊枝にはなれないけど丈夫で役立てる材料はあるので、開発に踏み切りました」と経緯を話す。

エレベーターのボタン以外にも、自動販売機やインターホン、コインパーキングの精算機など、いろんな場面で使用できる

『つまようじ屋の非接触棒』は長さ約7.5cm。工夫したのは「持ち運べる」ことと「すぐ捨てられる」こと。通常のつまようじに似たパッケージで持ち運びを可能にし、ゴミ入れをつけて使ってすぐに捨てられるようにした。

クスっと笑ってしまうパッケージもポイントで、ゴミ入れには「ちゃんとほかしや〜」のセリフも(『ほかす』は大阪では『捨てる』の意)。そして、コロナ(567)に負けない意味を込めて568円(税別)とした値付けも大阪らしい。

ゴミ入れの、おかんのセリフのような「ちゃんとほかしや~」の文字が書かれたパッケージ

4月28日からオンラインショップで販売が開始され、「どれだけ反応が来るだろうと思いましたが、すでに700件を超える注文があり、3500個売れています! 周りの人に配布する用なのか、何個も一気に購入してくださる方がたくさんいらっしゃいます」と驚いているという。

「ほぼ手作業で作っているので大変ですが、うれしい限りです! どこも大変ですが、嘆かずに前向きに考え、この状況を一緒に乗り越えていけたらなと思います」。もしかするとWithコロナ時代は、ポーチのなかに非接触棒が必需品になる日が来るかもしれない。

取材・文/小田切萌

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