休業解除も悩めるライブハウス…現場の本音を聞いてみた

2020.6.11 20:15

オープン当初より百花繚乱をテーマにさまざまな企画イベントやライブをおこなっている「梅田シャングリラ」(大阪市北区)

(写真7枚)

新たな楽しみ、感動が生まれることも

一方、いち早くライブ営業をおこなったのが、心斎橋の「Live House ANIMA」(大阪市中央区)。店長の吉條さんは、5月中旬頃から休業要請が解除されたら、すぐにライブをやりたいと考えていたという。

「でも、こっちのやりたい気持ちだけが先走って、バンドにもお客さんにも後ろめたい思いをさせるのは嫌だし、ちゃんとガイドラインに沿った安全な状況で、という制限を楽しみながらやれるバンド、ということでセックスマシーン!!に声を掛けて、一緒に会見を見ながらアイデアを練りました」と話す。

ガイドラインに沿って対策されたライブハウス

そして5月28日の会見後、すぐにネットで告知。6月1日に49名限定でおこなわれた緊急ワンマンライブは、なんと観客全員にでんでん太鼓を配布。立ち上がったり、声援を挙げる代わりに、太鼓を叩いてもらうという前代未聞のライブとなった。

「せっかくなんで、いろいろ制限したなかでのシュールなおもしろさを楽しんでもらおうと思ったんですけど、実際にやってみたらおもろいだけではない、妙な感動が生まれましたね。セックスマシーン!!のお客さん以外にも、たくさんの方が好意的に受け入れてくださってホッとしました」と吉條さん。

この形態のライブでは採算が取れないため、あくまで解除記念企画だそうだが、今後もホール部分で行われているバンドの配信ライブの模様をバーのモニターとスピーカーでリアルタイムで楽しめる『寸止め!パブリックビューイング』と題した新形態の営業をコンスタントにおこなっていく予定だという。

6月1日に49名限定でおこなわれた、セックスマシーンの緊急ワンマンライブ『すぐにライブやっとんねん!』

店舗ごとに形は違えど、ユーモアとアイデアを武器に苦境を乗り切ろうとする関西のライブハウスの「転んでもタダでは起きない精神」には、こちらが尻を叩かれる思い。自分にとって大切な場所を守るために、いま何をすべきか──。

「梅田シャングリラ」は現時点ではまだ営業を見合わせているが、6月以降は配信ライブの予定も増えてきており、キイさんは日々変化する状況に即座に対応できるよう、多忙な日々を過ごしているという。

「もちろん緊急宣言の解除は一歩も二歩も前進やと思ってますが、それは関西のライブハウスやイベンターさんがひとつになって大阪府に要請した結果でもあります。音楽関係者のほとんどが前向きにタフに頑張っています」とキイさん。

「今後、ネット配信がエンタテイメントのスタンダードになるとは決して思っていませんが、そういう新しい試みでいろんな人と繋がれたことで想像以上の力をもらえましたし、僕はそれ自体が業界の未来に繋がってると思うので。またライブハウスで会える日まで、いろんなアイデアを出して乗り切って行きたいですね」。

人任せにせず、私たちひとりひとりが考え、小さなことでもまず行動してみることが、ライブハウスに限らず、コロナ以降の未来を切り開くキーとなるはずだ。

取材・文/井口啓子

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本