未曾有の事態でどうする?関西の劇場の挑戦「E9」の場合

2020.6.14 21:15

2019年6月にオープンした「THEATRE E9 KYOTO」の外観

(写真5枚)

徐々に日常を取り戻し始めた関西だが、劇場やライブハウスはまだ全面再開とはいかない所がほとんど。そんななか、京都の小劇場[THATRE E9 KYOTO(以下E9)](京都市東山区)は、劇場に一切人を入れない『無人劇』を発表するなど、休館したままでも「演劇」を発信する、ユニークな試みに挑戦していた。

「無人劇などの不条理劇、演劇と劇場の形を模索」

新型コロナウイルスの影響で、「予定していた公演がすべてなくなっても、何らかの形でお客さまに演劇に触れていただきたかった」と、同劇場の芸術監督で演出家のあごうさとし。そこで取り組んだのが、劇場に一切人を入れない『無人劇』だ。

『無人劇』のイメージビジュアル
『無人劇』のイメージビジュアル

演劇とは、開催日時やチケット料金などを事前に告知するもの。「なので、4月29日の午後2時に『無人劇』をするので、参加したい方は料金3000円をお願いします。でも劇場には来ないで、その時間にお客様のおられるその場で深い呼吸をしてください、と呼びかけました」と不思議なことを言う。

具体的に見せる作品はなく、ただ全員が同じ時間に「演劇」を意識しながら深呼吸をするだけ、そんな試みだ。あごうは、「それでも135人の方々が、チケットを買ってくださいました。公演直後には、どのように過ごし、どんな感想を持ったかというメールが何通も届いたんです。そんな経験は初めてでしたね。お客さまとのつながりを強く感じられました」と手応えを感じたようだ。

全国の劇場の多くは、休館期間中に過去の舞台や無観客公演などを発信。一方で、E9がやってることは哲学的、思考実験に近い。しかしあごうは、「演劇って、基本的に客席と舞台の間に妄想や想像がバーっと立ち上がることで成立するもので、劇場はそのための場所。むしろその基本に、真面目にのっとってると言えるんじゃないでしょうか」と笑う。

同劇場の現状については、「とても困ってます。でも100%じゃないんです。99%は困って、1%は面白がってる」と、館長を務める狂言師の茂山あきら。「というのも、この1%から何かが出てくるかもしれないから。良い方か悪い方かはわからないけど、不幸だととりあえず進もうとしますからね」と、この動きのなかから何かをつかもうと考えている。

これにはあごうも、「動画サイトやZOOMで発信する芝居がどんどん生まれているし、実際私も今、ZOOMで芝居の稽古をしています。『人が実際に集まらないと、創作も発表もできない』という演劇の典型が変わるということは起こり得るでしょう。いろんな形式や、伝える角度みたいなものも、当然変わってくるんじゃないか」と期待をふくらませる。

「THEATRE E9 KYOTO(シアター イーナイン 京都)」

電話:075-661-2515(10:00〜18:00)
住所:京都市南区東九条南河原町9-1

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