渡辺いっけい映画初主演「天狗になる暇がない」

2020.7.16 19:15

これまではバイプレイヤーとして、「自分でリミッターを調節しながらやっていたふしがあります」と渡辺いっけい

(写真8枚)

「親父と同じ生き方は、俺にはそれはできない」

──ちなみに今作は、人は変わることができると人は簡単には変われないというテーマを描いています。そんなきっかけになった出来事はありますか。

上京したときに入っていた劇団が解散したときです。劇団内の人間関係でクタクタになってしまい、半年くらいは芝居に携わるのが嫌になってバイトばかりしていました。

僕にとって暗黒の時期。役者を続けたい気持ちもあったけど、すべてを断ち切って田舎に帰ろうかとも考えていて、実家で暮らす妹に電話で話したんです。

──妹さんはなんとおっしゃられたんですか。

私はこっちで働くお兄ちゃんは見たくないなと、さらっと言われました。妹は僕と感覚が似ているからこそ、そう言われたのは忘れられない。当時の自分にはかなり効きましたね。

左から、息子役演じる遠山雄、渡辺いっけい。©いつくしみふかき製作委員会

──映画の序盤では悪い血という表現があって、血という家族の脈々としたものを描かれています。実際に血には逆らえないと感じたことはありますか?

うちの親父は、堅実で地道に生きてきた人でした。あえて昇進試験も受けずに一駅員として、同じ駅でずっと切符を切り続けたんです。それを見ていて、これは決して悪い意味ではなく、そういう生き方は俺にはそれはできないと思ったんです。気づいたときは、どうしようって困惑しました。

でも、食えずにアルバイトをしていたとき、めちゃくちゃ単純作業が得意で。夜8時から12時間くらい働いてとっぱらいで日給をもらえて、それで嬉々としてやっていました。実は、得意だったんです。たぶん正社員でやっていたら、かなりいけたんじゃないか思いましたね。

家族や恩人を平気で裏切り続ける主人公を演じる
家族や恩人を平気で裏切り続ける主人公を演じる

──あとこの作品は何を信じるかについても言及されています。劇中には神事、牧師など『信じる』対象が出てきます。広志がかつて住んだ村のリニア誘致にしても、発展すると信じる人とそうじゃない人がいます。信じられる相手はどういう人になりますか。

僕は、劇団☆新感線の主宰・いのうえひでのりさんです。大阪芸術大学の頃のふたつ上の先輩なんです。僕は高校時代、演劇部でも何でもなく、文化祭で演劇が楽しかったから舞台芸術学科に入っただけなんですけど、大学時は演劇経験者を凌駕していく感じがあった。

そんなとき、いのうえさんと出会って、ついていた自信をグシャッとやられました。相手役との会話のタイミングも「俺がいったことを完璧にコピーしろ」と言われてやるんですけど、「違う!違う!」って。それで僕の後ろにまわってきて「このタイミングだ。体で覚えろ」って頭をはたかれたりして。あまりの厳しさに周りの劇団員もちょっと引いていましたから。

『いつくしみふかき』

監督:大山晃一郎
出演:渡辺いっけい、遠山雄、金田明夫、ほか
配給・宣伝:渋谷プロダクション

上映映画館:イオンシネマりんくう泉南(7/17〜)、テアトル梅田(7/24〜)、神戸アートビレッジセンター(8/8〜8/21・火休)、京都みなみ会館(8/21〜)

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