驚愕の味を生み出す「あんこ大学」、玉ねぎ・ホタルイカ味も

2020.7.12 09:15

松原あんこ大学(MAU)のトップページ。あんこの限りない可能性をそこはかとなく感じさせるビジュアル

(写真5枚)

とある大学がインターネット上に、6月に突如開校。「研究員」が日々、あんこを研究しているという「松原あんこ大学(MAU=Matsubara Anko University)」だ。菜の花、タケノコ、ホタルイカ・・・まったく味の想像がつかないあんこに、あんこコロッケなど、驚きの料理レシピの数々・・・この大学に謎に迫ってみた。

「あんこにできないものはない」をスローガンに、日々変わり種レシピを研究しているというMAU。その正体は、創業70年以上のあんこメーカー「松原製餡所」(神戸市中央区)だ。和菓子屋やパン屋と取引をしてきた、お菓子と異文化の街・神戸に根付く製餡所で、これまで300種もの餡を開発。「研究員」の正体は商品開発の部署を中心とした社員の皆さんだ。

商品化には至っていないあんこやレシピを発表する場だそうで、研究成果であるあんこを試食させていただいた。新作のテーマは、失われた春を味わうあんこ。コロナ禍での外出自粛期間だった今年の春に、「皆さまに春を感じてもらうために、あんこ屋としてできることを」と開発されたMAU渾身の3作である。

右上から時計回りに、桜あんに日本酒の風味をつけた「夜桜」、沖漬けをイメージした「ホタルイカ」、コンソメスープをイメージした「新玉ねぎ」(いずれも商品化は未定)

まずは、「花見をしている気分」をイメージし桜あんに日本酒風味のゼリーを混ぜた「夜桜」。ふんわりした桜と日本酒の風味がマッチしていて、まさにほろ酔い気分。これだけで上品なデザートになる、大変美味なあんこだ。

次は「新玉ねぎ」と、全く予想外のあんこ。おそるおそる口にしてびっくり。新玉ねぎ特有の甘さが前面に出ており、飴色になるまで炒めたようなおいしい玉ねぎの味がする。あんこは醤油で甘辛く仕上げてあり、全体で味がまとまっている。

そして最後が「ホタルイカ」。不穏さしかないが、「新玉ねぎ」が良かったので案外いけるかも・・・と思った瞬間に突き抜ける、強烈な磯の香り。「さすがに生のホタルイカは入れられないので、ホタルイカのパウダーを使っています」とのことだが、ホタルイカが苦手な人にはかなりハードルが高いかもしれない。

しかし、不思議とこれも、こんなにもホタルイカの味がしっかりするのにあんこの甘さに意外とマッチ。こちらもあんこに醤油を入れ甘辛く仕上げてある。「どうやって使ったらいいと思いますか?」と聞かれて言葉に詰まったが、とにかくどのあんこもあんことして成立しており、おいしいかおいしくないかで言えばおいしい。それが驚きで、MAUの技術ここにありと感じさせられた。

こんなにも、多様なあんこ開発を可能にしたのが、松原製餡所独自の「耐熱ゼリー技術」。熱に強いゼリーに風味をつけてあんこに混ぜることで、あらゆるフレーバーのあんこが作れるという。開発したのが、「松原教授」こと代表取締役の松原宏さん。約30年も前、しかも伝統を重んじる業界にあって、それは画期的な発明だった。

松原教授こと、松原宏代表取締役
松原教授こと、松原宏代表取締役

また、これまでにない斬新あんこを求めて、「松原製餡所」では毎年、全社員でプレゼンする『あんこコンテスト』を開催。開発担当者に限らず新しいあんこを提案し、杏仁あんや抹茶もちあんなど、そこから商品化されたものも少なくないという(松原あんこ大学のサイトでは2019年コンテストの詳細レポートも掲載。個性爆発のあんこが多数登場しているので是非ご一読を)。

松原取締役は「若い人のアイデアはすごい。これからはどんどん新しいあんこの使い方が生まれるはず」と期待を寄せる。ごはんにあんこをのせて食べたり、あんこをつまみに晩酌したり…そんな未来もそう遠くないかもしれない。

同大学では、研究員以外からも今後は、新味あんこのアイデアを募集。開発するにあたっては和菓子屋やパン屋も審査に参加し、良いアイデアがあれば商品化もしたいとのこと。我こそ、あんこ好きという方はぜひご参加を。

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