未曾有の事態、関西の劇場の挑戦〜HEP HALLの場合

2020.7.23 06:45

小劇場「HEP HALL」は、梅田のファッションビル「HEP FIVE」の8階に位置する

(写真7枚)

コロナ禍「臨機応変に、いつでも引き返せるように」

今回のコロナ禍のなかでも、HEP HALLは3月いっぱいまでイベントを実施した。「公演をやるかキャンセルするか、劇場はどちらにも応じるというスタンスでした」と星川さん。しかし緊急事態宣言で「HEP FIVE」が全館休館してからは、さすがに足並みをそろえざるを得なかった。8月には観客を入れた公演を再開する予定だが、やはり不安は大きい。

「空調設備は十分ですし、感染予防対策もいろいろ整えていますが、本当に『上手くいってください』と祈るしかないのが正直な気持ち。明日どういう状況になるかすらも、全然読めないですし・・・。先日、『1月はどうなってますか?』という問い合わせがあったんですが、『僕にもわかりません』と言うしかなかったです」と苦笑する。

この難局を、劇場と劇団はどう乗り切るか。「どうなっても、臨機応変に対応できるようにするのが大事ですかね」と星川さんが語れば、岡部も「いつでも引きかえせるようにする」ことが、今求められる姿勢ではと言う。

「今どうすればいいかは、もう誰に聞いてもわからない。かといって止まったままでは乗り遅れるので、とにかく進めないとな、という気持ちです。だから、いつでも止められる状態で進んでいって、もしそれが違ってたらすぐに正す。という方向で、行くしかないかと思います、今は」。

実はこの岡部の意見は、前回の[THEATRE E9 KYOTO]インタビューでの、茂山あきらの「『これだけ進んだから、戻るのは惜しい』と思わずに、右に曲がったのが間違いとわかったら、すぐ左に曲がったらいい」という言葉とほぼ同義。「いつでも方向転換が可能な姿勢を取りながら進む」というのが、ジャンルを問わず、ポストコロナ時代を乗り切るための鍵かもしれない。

「みんなと同じ空間で時間を共有したい」岡部尚子

空晴・第17回公演「となりのところ」(2018年6月上演)より 写真/衛藤キヨコ
空晴・第17回公演「となりのところ」(2018年6月上演・HEP HALL)より 写真/衛藤キヨコ

そして岡部に「再開したHEP HALLでやりたいこと」を聞くと「普通にお客さんを入れて、普通にお芝居がしたい」という、素朴だけど切実な願いが。

「普段私は稽古がイヤで、寝てる間に役者が上手くなってくれたらと思うんですけど(笑)。今回数カ月ぶりに稽古をしたときに私は、同じ場所に人が集まって、同じ時間を共有することが好きで、演劇をやってるんだなあ・・・と実感させられました」。

「今回は無観客ですけど、一緒に笑うとか楽しむという時間を、やっぱりみんなと同じ空間で共有したい。10月の新作は、そういうことを私なりに物語にして、観客のみなさんの前で、この劇場でお見せできればと思います」。

取材・文/吉永美和子

HEP HALL ON LINE

空晴 リーディング芝居『一番の誕生日!』
日時:2020年7月25日(土)・16:00〜/20:00〜
作・演出:岡部尚子
出演:小池裕之、南川泰規、駒野侃/上瀧昇一郎(20時の回のみ)・古谷ちさ(16時の回のみ)

『保健室で抜く男子高校生の話』
日時:2020年7月26日(日)・16:00〜/20:00〜
作:山村菜月
演出:虎本剛(ステージタイガー)
出演:福田薫、中島大、辻谷敬亮、古見時夢

会場:HEP HALL(大阪市北区角田町5ー15 HEP FIVE 8F)
*無観客につき当日入場不可
料金:1500円
電話:06-6366-3636

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