2020年上半期に見逃していない? 観るべき洋画の評論家鼎談
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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
「監督賞にノミネートされないことは本当におかしい」(斉藤)
田辺「あと、『パラサイト』を軸に話題を膨らませると、アカデミー賞でもっとライバルになるべきだった『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』。実はすごさではこちらが優っていたという! 特に終盤は声が出るくらいびっくりした。俗に言う『第四の壁を破る』ってやつで・・・」
斉藤「これって、メタ構造なんや!ってなったよな。女性が自立するには何より経済的自立が重要とか、出版についてもとことん印税率にこだわってみせたりして。『若草物語』のジョーは原作者ルイザ・メイ・オルコットがモデルなのは常識として、こちらもシアーシャ・ローナンがダブルイメージで演じてるのは理解するんだけど、いちばんロマンティックなシーンでオルコットがジョーを批判しはじめるんだよね」
田辺「こっちに壁を越える?っていうやつですよね。あれを見たときに、そういうことなんだって」
斉藤「あれ、びっくりするよなぁ? しかも、いちいち画が素晴らしい。クリスマスに若草の一家が貧しい家に料理を持っていくシーンの引きの画とか」
春岡「隣の家の親子が窓から見ている、という視点にはびっくりした」
斉藤「視点が多層的なんですよ。素晴らしい演出ばかり。グレタ・ガーウィグが監督賞にノミネートされないことは本当におかしい。傑作だよ」
田辺「グレタ・ガーウィグ監督は前作『レディ・バード』(2017年)でも才気を感じたし、もともと女優としても『フランシス・ハ』(2012年)、『20センチュリー・ウーマン』(2016年)とかおもしろいことをずっとやってきた人でね。アカデミー賞に関してはポン・ジュノの印象が強すぎたけど、映画を観たら『こちらの方がトップ評価かも』と思えたりしますよね」
春岡「役者でいえば、お母さん役のローラ・ダーン。『人間、善良でなくちゃいかんな』と久しぶりに思ったよ。善良な人は良いなぁって。『マリッジ・ストーリー』(2019年)もそうだけど、演技者としてすごいよ」
斉藤「というか、みんないちいちやさしい。1949年のマーヴィン・ルロイ、1994年のウィノナ・ライダーの『若草物語』なんかも良いんだけど、こっちの『若草』がやっぱりすごい」
春岡「そういえば原題は、原作通りの『Little Women』なんだけど、日本でいつから『若草物語』になったのか調べたんだよ。1868年に原作が書かれて、日本での初版が1909年。そのときは『小婦人』という題名だった。それが1933年にキャサリン・ヘップバーン主演で製作された映画が、翌1934年に日本公開されて、その邦題が『若草物語』なんだ。少女小説家の吉屋信子が日本語監修をしているので、彼女が名付け親らしい。それ以降、原作の訳本は何冊も出されているけど、みんな『若草物語』というタイトルになっている。映画の題名から派生したタイトルなんだよ」
田辺「へー! それが今も生きているんですね。そして『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』の若草姉妹の四女役だったフローレンス・ピューが主演したヒット作が、アリ・アスター監督『ミッドサマー』。これは年間ベスト級です」
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斉藤「しっかりヒットしたからね。うちの高校生の娘に今、何が流行っているか聞いたら『ジョーカー』(2019年)と、『ミッドサマー』だってさ。素晴らしいよねぇ。それをみんな観に行くと・・・健全におかしいという(笑)」
田辺「スウェーデンの奇祭へ向かう若者たちが序盤にキマっちゃって、そのあとも謎のジュースを飲まされたりという話ですもんね。で、画面のどこかが歪んだり揺らいだりしているんですよね。画がトリップしている。構図もすごく整理されていて、かつ統制的で。食事をとるシーンとかまさに。だから揺らぎとかそういう違和感が効いてくる」
斉藤「アリ・アスター監督の『ヘレディタリー/継承』(2018年)を観たときに、スタンリー・キューブリックだなって思ったからさ、それに近いよね。とにかく頭のなかでかなり作りこんでいて、それをしっかり画にしている感じがする。即興性がなさそう」
田辺「セットというかロケーションを見ても一切隙がない」
斉藤「音も編集もとにかく隙がない。話としては、元ネタは間違いなく『ウィッカーマン』(1973年)。奇祭のあたりは民俗学的ウンチクをリミックスして。アカデミー賞でもさ、オープニングでノミネートもされてないのにフローレンス・ピューの衣装で踊る場面があったりさ。それくらいみんなの脳裏に刻まれて、誰もが大好きな作品なんだよね」
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