商品を一切語らない…大阪の化粧品会社の話題広告、狙いは?

2020.8.15 20:15

表参道駅に掲出された広告

(写真5枚)

東京の「表参道駅」に7月〜8月にかけて掲出され、SNSで全国的に話題となった「オコジョ」広告をご存じですか?

天使すぎるかわいさと人気のイタチ科の小動物・オコジョの写真をドンッ!と大きく載せ、ひとしきりオコジョを褒めまくる文章。そして最後に「化粧品会社・株式会社セブンツーセブン」と締めくくり・・・って、ん?化粧品会社? 化粧品のこと、一切語っていませんよね?

この「セブンツーセブン」は、新幹線沿いに等間隔で大きく「727」とだけ書かれた野立看板を出したり、自社のウィキペディアのキャプチャーを広告に出したりと、「ちょっと変わった」広告で知られる、大阪の化粧品会社なんです(本社:大阪市中央区)。

今回の広告も冒頭、「ほとんどの方はおそらく看板広告なんてご覧にならないと思いますので、好きなことを書いても問題ないということに気づいてしまいました。好きな動物はオコジョです」という攻めの姿勢で始まります。た、たしかに・・・看板広告って、悲しいけれどそうなのかもしれない。

広告について、セブンツーセブン企画室室長の磯島裕介さんにお話を伺いました。

──オコジョの広告、とってもかわいらしいですね! が、文章を読むとなんだか考えさせられました・・・。

ありがとうございます! 実は、4〜5月に掲載予定だったんですが、緊急事態宣言を受けて中止したんです。そんななか、コロナに関する暗いニュースがどんどん増えてきて・・・。

コロナ禍をポジティブにとらえるのは難しいですが、ただただオコジョのかわいさを語るだけの広告は元気や癒やしを与えられるんじゃないかなと考え、7月27日から8月9日まで、東京メトロ「表参道駅」に掲出することにしたんです。

オコジョの写真はゲッティイメージズで購入し、あえてウォーターマークを残したという

──まさに狙いどおりですね! 元気になった人も多いのではないでしょうか。

あと、改めて後押しになったのが、5月にSNSでの誹謗中傷で悲しいニュースがあったことです。この時期に、誰も傷つかない広告を掲出したいと考えました。おおげさかもしれませんが、明るい未来に繋がれたらいいなと願っています。

──誰も傷つかない広告・・・素晴らしいです。でも数ある動物のなかでなぜオコジョを?

社内で好きな動物を出し合ったんですが、オコジョとマンチカンが一騎打ちで。私はマンチカン派だったんですが負けました・・・。でもオコジョがとてもかわいいので、オコジョにしてよかったと思っています!

──社員みなさんで取り組まれたんですね。これまでの新幹線の野立看板やウィキペディアの広告もそうですが、化粧品のことをまったく語らないのはなぜですか?

実は、新幹線の野立看板の広告は40年ほど前からおこなっていまして。先人たちによる、「ほかの人と同じことをやっても埋もれてしまうから、常に独自性をだすこと」という教えを継がせていただいている形ですね。わたしたちの広告のテーマは「成熟した思考でやんちゃしたい」です。

新幹線沿いに現れる不思議な看板。「5~7分間隔で1本見えるぐらい」を目安に設置されているそう

──え! かっこいいですね。

過去の経験や知識、インプットをもって、どれだけ遊び心のあるアウトプットをできるか、挑戦をしています。

──遊び心を入れるって、結構難しかったりしますよね。

弊社は創業76年目の老舗化粧品会社なんですが、企業の認知度としてはまだまだで。これまで謎の看板をだす変な企業でとどまっていたと思うんです。ですが、今回SNSで「あの看板の会社、化粧品会社だったんだ!」という声もあり、嬉しかったですね。

また、弊社は美容室向けに化粧品を卸しているんですが、「あのオコジョの広告で話題の」って紹介をしてくれたり。また、匿名で「元気になりました!見かけたら買いますね」というメールもいただけて、広告をだしてよかったなと思っています。

──今後もし仕掛けたいと思っていることがあればおしえてください!

もっとセブンツーセブンのことを知ってもらって、みんながハッピーになれることをしていきたいですね。話題も、笑いも、欲張っていこうと思います!

取材・文/小田切萌

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