尾崎裕哉、父・豊の楽曲を熱唱…継承と革新のコンサート

2020.8.20 19:15

熱唱する尾崎裕哉(15日・兵庫県西宮市)写真/渡邊一生

(写真4枚)

ここで会場の扉を開けての換気タイムに入ると、前半のヤマ場となった2曲について、「なかなか緊張する曲の並びでして・・・」と語り、「今日はいつもより(曲間で)咳をする人が少ないですけど、大丈夫ですからね」との観客への気遣いも。

気さくなトークで和ませると、コロナ禍のなかで曲作りとレコーディングを進め、10月21日には初のフルアルバム『Golden Hour』をソニーへ移籍して発表することを報告。

「オチはないです」と関西の観客に申告し、笑いをとる尾崎裕哉(15日・兵庫県西宮市)写真/渡邊一生

そして、後半は再び父の『Forgetーmeーnot』から幕を開けると、続く『Lonely』では英語での歌い出しに、曲の中盤ではソウルフルなファルセットの歌声も響かせながら、アルバムでの新境地を予感させる展開に。

そこからスウィンギーなR&B調のリズムを伴った『音楽が終わる頃』、現代的なチェンバー・ポップ風のオーケストラ・アレンジも斬新な『Rock’n Roll Star』と続けて、父親とはまた異なった自身の方向性をしっかりと覗かせたのが印象的だった。

そして再び、永遠のカリスマである父親の楽曲を継承する歌い手としての凄みが最大限に発揮されたのが、1988年発表のアルバムのタイトル曲でもある『街路樹』だった。

もともとオーケストラとコーラスを伴った原曲の壮大なアレンジをほぼ忠実に再現し、起伏に富んだメロディをエモーショナルに歌い上げて聴く者すべてを圧倒すると、客席に手拍子を求めて自身のグルーヴィーな『27』へ。立ち上がって一緒に歌ったりすることはできないものの、着実に場内の一体感とテンションを高めたところで本編のラストには『Glory Days』を響かせて、クライマックスを力強く締めくくった。

ビルボードクラシックスオーケストラ、ゴスペルコーラス(ソウルバードクワイア)とともに披露する尾崎裕哉(15日・兵庫県西宮市)写真/渡邊一生

アンコールでは、原曲のロマンティックで甘美な魅力を引き立てるように、流麗で繊細なオーケストラの伴奏をバックに名バラードの『I Love You』を。

ドラムスなどのリズム・セクションを伴わないフル・オーケストラだけを伴奏に歌うコンサートというのは、シンガーとしての力量の高さがシビアに問われるものだが、尾崎裕哉はすでにそれを巧みに歌いこなす表現力を身に着けていることを最後に再確認させた。

表現力を深めた「継承」の部分と、これまで以上に現在進行形のシンガーソングライターとしての個性を強く感じさせた「革新」の部分。待望のアルバム・リリースを控えたタイミングでの公演となったことで、彼が内包する「継承と革新」がより鮮明に感じられた全14曲だった。

取材・文/吉本秀純

billboard classics「尾崎裕哉Premium Symphonic Concert 2020 -継承と革新-」

日時:2020年8月15日(土)・16:30〜
会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本