奈良最古の醤油蔵元「今ならなんとかなる」、70年ぶりに復活

2020.8.27 07:15

第18代目当主・木村浩幸さん

(写真7枚)

1949年に閉業していた奈良最古の醤油蔵元「マルト醤油」(奈良県田原本町)の醤油が約70年ぶりに8月29日に復活する。

元禄2年(1689年)に創業し、奈良・田原本で長年醤油を醸造してきた同蔵元。皇室にも納められていたことでも知られ、また昭和初期までは皇族が通うこともあったほど由緒ある蔵元だったという。

しかし第二次世界大戦後、物資不足で創業以来こだわり続けていた「地元産」の原材料の仕入れができなくなったため、第17代当主が閉業。半世紀以上にわたり醤油の醸造はおこなわれず、蔵も手付かずのまま残されていた。

「現在スーパーで販売されている一般的な醤油は半年ほどで出来上がります。マルト醤油は2年間熟成することで、まろやかで香り高いものが出来上がる。そしてもろみから醤油を絞り出してみると、本当に少ししか抽出できない。本来醤油は大量に生産できない、一滴一滴がとても貴重なものなんです」と話すのは第18代目当主・木村浩幸さん。

2011年に書庫で古文書を発見したことをきっかけに今回のプロジェクトを開始。古文書を読み解くうちに、「祖父が物資不足を理由とした閉業だったので、今ならなんとかなるのでは?」と、2013年ごろからは醤油の醸造を本格的にスタート。

醤油蔵。宿泊者は見学に案内してもらうこともできる。醤油の濃厚な香りが漂う

地元の協力で材料の調達が叶い、また蔵から酵母菌が見つかったことで、試行錯誤の末、見事醤油の再醸造に成功。現在、2022年1月からの一般販売を目指して、日々醤油作りに励んでいる。

木村さんは、「甘みがあり、風味豊かでまろやかな味わいが特徴の醤油です。日本の原風景が見られる田原本で醤油文化を体験してもらえたら」と醤油だけでなく、醤油醸造文化を知って欲しいと話す。

現時点では、醤油『大和一雫』の一般発売は、2022年1月を予定。また、同蔵元敷地内に8月29日に同時開業する宿泊施設「NIPPONIA 田原本 マルト醤油」で提供される朝食にて、しぼりたての醤油を味わうことができる。宿泊客は醤油蔵の見学や醤油しぼりなどの体験も可能。

取材・文・写真/野村真帆

「NIPPONIA 田原本 マルト醤油」

2020年8月29日(土)オープン
住所:奈良県磯城郡田原本町伊与戸170
営業:9:00〜19:00(※土曜のみ9:00〜18:00)
電話:0744-32-2064

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