明日海りお「ときにはこだわりを捨てて、きちんと学びたい」

2020.9.19 20:15

映画『ムーラン』の公開を記念して行われたオンライン・パーティーで、笑顔を見せる明日海りお。今回は東京と大阪でのリモート取材

(写真4枚)

ディズニー長編アニメーションを実写映画化し、世界でも話題の『ムーラン』。9月4日からディズニー公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」で有料公開されている日本版吹き替えで、年老いた父に代わり男性と偽って戦地へ赴く少女ムーラン役を務めているのが、宝塚歌劇団で絶大な人気を誇った元男役の明日海(あすみ)りおだ。

圧倒的な美とエネルギーを放ちながら、異世界の神秘性や人間の業も余すことなく表現し、5年半の長きにわたり花組トップスターを務めた明日海。2019年11月に退団後、初の仕事となったムーランの声優やディズニーへの想い、さらに愛猫との触れあい、今後の舞台や歌の活動についてなど、柔らかな表情で語った。

取材・文/小野寺亜紀

「ムーランの心の強さと美しさには、共感を超えて尊敬」

──約17年間在籍された宝塚歌劇団では、舞台人としてどのような信念をもって過ごされていたのか、改めて教えてください。

長い歴史のある劇団で、みなさん伝統を重んじながら個性を出しつつ、誇りをもって男役を究めてらっしゃったので、私自身もやっぱり納得するところまで仕上げたい、と思っていました。でも、卒業するその日まで「自分の憧れた男役というものは、まだまだ先にあるんだぞ!」と思っていました。

──最後まで上を目指しながらの卒業だったのですね。

もっと究められるところがあるのでは、と・・・。もちろん達成感はありましたけど、応援してくださっている方々に「観てよかった!」と思っていただけるいい舞台をお届けして、(男役を)見納めていただかなくては、という使命感のほうが強かったです。感傷にひたるとか、私自身のことよりも、そちらのほうに一生懸命でした。

──退団後初のお仕事が、ディズニー映画『ムーラン』日本版声優となりました。明日海さんは「舞浜アンフィシアター」(※東京ディズニーリゾート(R)内にある多目的ホール)でのコンサートご出演経験もあり、以前からディズニーは大好きと仰っていましたが、ディズニーの歴史に関われた喜びなどありましたか?

はい、これまでもたくさんの作品を観てきましたし、これからも大好きなディズニーですので! ひと作品というと、ディズニーの長い歴史のなかではほんの一瞬の出来事かもしれないですが、こうしてご縁をいただけてうれしかったです。

──オーディションや収録現場で印象的だったことは?

まず声優のお仕事自体が初めてだったので、オーディションはどのようにおこなわれるんだろう、というところからドキドキで。自分が女性としてどんな声を出すのかもわからず、不安だらけでした(苦笑)。

収録では、吹替版の女性監督の方が、ひと場面ひと場面、シーンの状況のアドバイスをくださり、「例えばここはどう思う?」などと話し合いながら進めてくださったので、とても有意義な経験となりました。その方がやさしくて格好よくて、出会えてよかったと思いましたし、どんな声が一番ムーランらしいのか、ひとつひとつ考えながらつくり上げることができました。

──映画を拝見し、内に強い「気」を秘めたムーランが、男装して兵士となり英雄となっていくというのが、強い志をもって入団し、いろんな役を演じてこられた明日海さんと重なるようにも感じました。

ありがとうございます。

──共感できる部分は多かったですか?

共感というよりは、尊敬の部分が多かったです。忠義・勇気・真実という3つの徳に対して、正しくあろうとする真っすぐさをムーランは持っています。もちろん魔女のシェンニャン(本作のオリジナルの登場人物)から投げかけられる言葉によってもムーランは変化していくのですが、自分らしい次の一歩は何だろうと考えて、自分で進んでいける心の強さ、美しさは、共感を超えて尊敬という感じでした。

──大きな戦いに出る前に、仲間にかけるムーランの言葉に包容力のようなものも感じました。

仲間のためにとか、仲間を助けるというのは、やっぱり宝塚時代に仲間の大切さを実感することがとても多かったので・・・。あ! ムーランと共感できるところがありましたね(笑)。あと、戦いと言えば、居合の声「ウォー!」とか「アー!」(拳を上げる)とか、そういう声を女性はあまり出さないと思うので、そこは男役をやってきてよかったなと思った部分です。

主人公のムーラン。ディズニープラス会員、プレミアアクセスで独占配信中 ※追加支払いが必要です。詳しくはdisneyplus.jp へ© 2020 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

──映画の原作となっているムーラン(木蘭)の「伝説」にちなみ、明日海さんの中で何か「伝説」となっている出来事があれば、教えてください。

よく話になるのは・・・これはほんと、伝説とかでもなくオモシロ話なんですけど、私、鳥は苦手なんですが虫は大丈夫で、映画のムーランみたいに蜘蛛とかも大丈夫なんです。あるお店へみんなと出かけたとき、虫が出てきたので私がソーッと布で虫を包んで、スタッフの方にお渡ししたら、一緒にいた人たちが驚いて、「あれは英雄だった!」と伝説にしてくれています(笑)。

──(笑)。明日海さんと言えば、宝塚歌劇の歴史上初めて横浜アリーナでライブコンサート『恋スルARENA』(2019年)を開催されたというのは、ひとつの伝説だと思うのですが!

そうですね、あれは本当にありがたかったです。私自身が「伝説です!」と言えたらいいのですが(照)。

映画『ムーラン』

監督:ニキ・カーロ
出演:リウ・イーフェイ/コン・リー/ジェット・リー/ドニー・イェン
日本版声優:明日海りお、小池栄子

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*追加支払いが必要です。詳しくは公式サイトにて

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