バイプレイヤー宇野祥平「役と自分がごっちゃになった」

2020.11.16 17:17

まともな就職もできず、世間から隠れて生きてきた生島聡一郎を演じる宇野祥平。(C)2020 映画「罪の声」製作委員会

(写真7枚)

「みんなの力で、あの役が作りあげられられた」

──終盤の記者会見シーンは原作よりもずっと大きく扱われています。まさに宇野祥平ワンマンショウで、監督はじめスタッフさんの全幅の信頼なくして撮れなかったものだと思うんですよ。

曽根さんにスーツを着せてもらうシーンと、あの記者会見が僕のクランクアップの日でした。まず、順番に撮らせてもらったのが大きかったですね。

──そうなんですか。映画としては珍しいですもんね、そういう順撮りは。まあ、そのあとのエピローグは別にして。

まず、阿久津さん(小栗旬)と曽根さん(星野源)の二人と、相生橋で待ち合わせしてるシーンが初対面だったんですね。今ふっと思い出したんですけれど、道頓堀の下の遊歩道をお二人が歩いてくるんですけど、僕が当時大阪に住んでたときはそんな遊歩道はなかった。総一郎と同様に久々に訪れたことで、いろんな記憶を思い浮かばせたんです。

──物語のなかの聡一郎も、大阪から流れ流れてさまざまな土地を巡った末、絶望の淵に立っていて。

あと、本当に不思議なこともあるんですよね。中華料理屋の三谷さんに聡一郎さんはお世話になっていた、ってお話なんですけども、僕の親戚のおじさんに中華屋さんがいたんですよ。そこで週末に働いたことがあったんで。京都も小学校に入る直前に住んだことがあったりとか。

──聡一郎も、あの事件に巻き込まれて京都に仕方なくいたこともある設定でしたよね。

なんだか不思議でした、自分でも役と自分がごっちゃになるっていうか。監督、小栗さん、星野さんはじめ、すべての部署のみなさんの力があって、聡一郎になれたように思います。これまでどんどん記憶が薄れていっていたことを、なんだか思い出していったという感覚はありますね。

顔も見えないのに負のオーラを醸し出す、最初の登場シーン。(C)2020 映画「罪の声」製作委員会

──私たちの世代に刷り込まれている異様な事件によっていろんな記憶装置が働きやすい作品だったのかもしれませんね。ところで、土井監督との初めてのセッションはいかがでしたか?

一方的には映画もドラマも見てましたし初めてなんですけれど、最初にお会いしたときに、「いや、前から知っているんじゃないか?」っていう感じがして。監督はそう思ってないかも知れないんですけど、とにかく僕のことを僕より知ってくれているなと思いました(笑)。

初めて会った人に撮ってもらうより知ってる人に撮ってもらう方が心が開ける部分があるので、そういった気持ちでいることができました。

──この間、監督とお話させていただいたときに感じたのは、TBSのスター監督ではあるけど、おそらくずぶずぶのシネフィルなんですよね、土井監督って。だからいろんな映画で宇野さんのイメージは脳裏にこびりついていたのかと。

僕を知ってもらえてると思わなかったので、うれしかったです、ホントに。さっき、原作を読んで聡一郎さんに自分を重ねたと言いましたけど、まさかその役を僕に振られるとは思っていなかったんです(笑)。

映画『罪の声』

2020年10月30日(金)公開
監督:土井裕泰
脚本:野木亜紀子
出演:小栗旬、星野源 ほか
配給:東宝

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