コロナ禍の関西演劇祭「そろそろ伝説の奴が出てきそう」

2020.11.16 06:45

『関西演劇祭』スペシャルサポーターの行定勲と西田シャトナー

(写真9枚)

「関西の小劇場界で伝説の奴が出てきそうな時期」(西田シャトナー)

──その「生で何かを観る」というときに、『関西演劇祭』の出場団体のような、インディーズの若者たちの表現を観るのは、メジャーな表現とは違った、どんな喜びがあると思いますか?

西田 すごく簡単に言うと「まだ誰も評価してないものを観にいこうぜ」ということですね。世間一般には全然評価が定まっていないけど、それは逆に言うと、自分がどう評価しても自由だと。世間の「あれが面白い」という声に惑わされず、素直に観ることができるものを観に行ける、ということです。「食べログ」に載ってない店に行く、みたいな(一同笑)。

行定 そうそう、まだ誰も知らない才能を見つけにね。

西田 今一番世界で売れてるバンドも最初はそうだったし、その才能を世間よりも早く見つけるってことが、インディーズの楽しみじゃないですかね。それって結局、自分が何をいいと思うかという、自分自身と出会いに行く場所でもあるんです。「これを褒めたら、友だちから何と言われるやろ?」と思いつつ、でも褒めざるを得ないものを探しに行くというね。

2019年の関西演劇祭より。審査員特別賞を受賞した「夕暮れ社 弱男ユニット」
2019年の関西演劇祭より。審査員特別賞を受賞した「夕暮れ社 弱男ユニット」

行定 僕は、発見された才能の衝撃って、最初の1発目を超えられないと思ってるんです。だからみんな、初期作品を必ずほめる。シャトナーさんも多分そうだと思うし、僕もいまだに「『GO』(2001年)が・・・」って言われちゃう(笑)。

西田 あれは今でも、人気がありますからねえ。

行定 でもそういう作品が、インディーズの時代に出ないと未来につながっていかないし、しかもいつ出るかわからない。そういう意味では、最初の衝撃と出会い、発見できるのがインディーズの楽しさなんです。でもそれに出会うと(最新作と)絶対比べて、なかなか超えられなくなるんですけどね。僕のなかでは、ジム・ジャームッシュはいまだに『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を超えられてないけど(笑)、でもこの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を探しに来てよ、と思うんです。

西田 僕も自分の芝居は、今の方がいいものを作ってると思ってるんですけど、やっぱり若い頃の作品に「誰も応援してないのに、よくこんな冒険したなあ」ってものがあるんですよ。確かにこの捨て身感は、なかなか今は持てないかもしれない。

行定 やってるでしょ? そういうのを見たいなあ・・・っていう僕らの発言を書いてくれると、それを読んだ人が「俺の作品、そうなってるかなあ?」と考えてくれるだろうと(笑)。とんでもない奴を観せてくれよ、って思いますね。

2019年の関西演劇祭より。出演した鳩川七海がアクトレス賞を受賞した「幻灯劇場」
2019年の関西演劇祭より。出演した鳩川七海がアクトレス賞を受賞した「幻灯劇場」

西田 でも関西の小劇場界で言うと、そろそろ伝説の奴が出てきそうな時期じゃないかなあ。それが今年なのか、来年なのかわからないけど、今やってる連中の誰かが伝説になる確率は高いです。

行定 その上で「関西にこんな才能があるんだよ」というのを知って、そして広げていきたいですよね。実際僕は、昨年観て良かった人に短編の仕事を振りましたから・・・コロナのこともあって、残念ながら流れちゃったけど(笑)。

西田 そうやって、何かの始まりになる、未来につながっていく演劇祭になるんじゃないかなと、僕は思っています。


同演劇祭は、11月21日から29日まで「TTホール」(大阪市中央区)にて。オーディションを通過した10劇団が参加し、期間中に1公演2劇団の作品をオムニバス上演する。

出演団体は、「Artist Unit イカスケ」「安住の地」「キミノアオハル」「くによし組」「劇団アンサングヒーロー」「劇団 右脳爆発」「劇団The Timeless Letter×ラビット番長」「劇団乱れ桜」「ばぶれるりぐる」「May」。チケットは一般3000円、学生2000円(当日は各500円増)で発売中。

『関西演劇祭2020』

日程:2020年11月21日(土)〜29日(日)※25日・26日は休演
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール(大阪市中央区大阪城3-6)
料金:一般3000円、学生2000円(当日は各500円増)

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