YOKO FUCHIGAMI、今のファッションを斬る

2020.11.18 20:15

YOKO FUCHIGAMI (C)クリエイターズ・ファイル

(写真10枚)

「母への仕送りは12万。計算してお金を使ってもらいたいから」

──2020年は社会全体としては新型コロナの問題がありましたけど、YOKOさんのパーソナルな部分では、お母さまとの再会がありましたね。4月にYouTubeで、その模様を追いかけたドキュメンタリー番組が公開されましたが。

そうなの。あれからも母はずっとデンマークに住んでいて、私が毎月仕送りをしているの。あとFUCHIGAMI家は9姉妹ですから、それぞれが9日間に渡って交互に母をケアしています。でもコロナの時期なので陸路、空路を使って会いに行けません。だから、ファッションケーブルを使っています。

──えっ、ファッションケーブルって何ですか!?

ファッション業界の限られた人間だけ利用できる、地下に張り巡らされた通信ケーブル的なものよ。昔のラブホテルみたいに、カプセルのなかにメッセージを入れて、シューターみたいなもので飛ばすの。昔はパリコレとかで、デザインが間に合わないときはとにかくラフだけ描いて送っていたわ。今でもそれを使っているの。

──やっぱりファッション的な意味でも、SNSやメールではダメなんですね! ちなみに下世話な話ですけど、お母様への仕送り額ってお幾らですか。

12万ですね。

──12万円ですか。もっとすごい金額を渡していらっしゃるかと思いました。

あまり多く仕送りをすると、やりくりについて頭を使わなくなるじゃない。母の性格上、自分で何もしなくなる。もっともっと考えてお金を使ってほしいという願いを込めて、12万なの。あと数万くらいは自分で何とかしてほしいしね。

──FUCHIGAMI9姉妹についてですけど、みなさんデザイナーなんですよね。

七女、八女だけ違うわ。彼女たちは窃盗犯よ。ひとりは刑務所暮らしで、もうひとりは指名手配中なの。悪い人たちよ。だって、高齢者の財産を盗んでいるんだから。ほかの姉たちはデザイナーとしてファッション界にそのブランド力を示しているわね。

「靴だろうがジャンパーだろうが、私は絶対に食べます」

──あのドキュメンタリーを観ていたら、YOKOさんはすぐ泣いていましたよね。年々、涙もろくなってきましたか?

そういうワケじゃないの。体の構造上の問題ね。どうしても薬品を体に入れているから。

──どういうことですか。

その服が安全かどうか確かめているの。ファストファッションが主流の時代のなか、「そんなに安く服を売って大丈夫なの?」って、その素材を調べるために飲んでいるの。YOKO FUCHIGAMIとして「ファストファッションも大丈夫ですよ」と示さなきゃいけない。

──うわっ、身体を張っていますね。

そうしたらずっと涙が出てくるようになったり、熱が続いたり、下痢が止まらなくなったわ。だから、あれは泣いているんじゃないの。服を飲んでいたら身体の構造が変わっただけ。ファッションはそこまでやらなきゃダメよ。

靴だろうがジャンパーだろうが、私は絶対に食べます。時には溶かしたり、煎じたり、その日のお好みで。そもそも自分が作る服を食べていないブランドが今は多すぎるわ!

──お怒りですね! ちなみにお母さまと生き別れたのが19歳のときで、当時のYOKOさんは闇を抱えていたんですよね。

母は洗濯が下手だったの。いつも半乾きのにおいがしたわ。梅雨の時期も、洗ったら干さずにタンスに突っ込んだりしてたから、カビも生えていた。食器だって、フチに茶ヤニがこびりついていたり、お箸におかずのカスがカピカピになって残っていたり。それが原因で友だちからバカにされて、母親との間にわだかまりができた。つい最近まで、私は母のことが許せなかったの・・・。

──かなり根深い闇だったんですね。

ただ、その反動が今のファッションに生きているわ。セカンドブランドの「コボシ」は、カレーが飛んだり、こぼしたりしたときに白シャツに付着するシミを、そのまま模様にしているの。ドット柄みたいなもの。つまりライフスタイルで出来た模様ね。

YOKO FUCHIGAMIが発表っしたカレーの「こぼし」TシャツとバーニャカウダTシャツ
YOKO FUCHIGAMIが発表したカレーの「こぼし」TシャツとバーニャカウダTシャツ(2017年・神戸コレクションにて)

あと「HANGWAKI(ハングワァキ)」は衣類を全部、半乾きの状態でブティックに出します。これは先ほど話した母に対する懐かしさがモチーフになっています。今は、あのにおいもまったく気にならなくなりました。半乾きのにおいって、ライフスタイルのなかで生まれた香水。バクテリアたちが作ってくれたデザインよ。

──すごく斬新な意見ですね。最後にYOKOさんにお尋ねしたいことがあります。もうすぐクリスマスがきますが、どんな風に過ごしますか。

まず私のことではなく、ファッション的な意味で「サンタクロースはいつまで同じ服を着ているの」と言いたい。きっと寒いでしょうし、ダウンジャケットを羽織るなり、ヒートテックを着込むなりしてほしいわ。とても心配だわ。

──確かにサンタクロース然り、クリスマスのイメージって昔から変わりませんよね。

みんな七面鳥の丸焼きを食べるじゃない? でも、あんな風に、串で突き刺して回転させて焼くなんて、許せないわ。鶏肉に対して失礼よ。そもそも七面鳥を食べるという考え方にみんな流されすぎよ。

私は自粛期間中、鳥を捕まえて食べていたけど、くちばしから何から全部食べていたから。そこまでやって「鶏肉食べたよ」と言えるの。ファッションもクリスマスもワンパターンじゃダメよ!

9階の「YOKO FUCHIGAMI プチプチブティック」(期間限定)

「心斎橋PARCO」9階のイベントスペースにオープンする『YOKO FUCHIGAMI プチプチブティック』は11月20日から29日までの期間限定。ブランドの今季の新ラインを先行発売するほか、実際にYOKOが着用した衣装の展示、フォトスポットも登場する(入場無料)。

『YOKO FUCHIGAMI PETIT PETIT BOUTIQUE』

期間:2020年11月20日(金)~29日(日)
時間:10:00~20:00 ※最終日18時閉場 
※感染症拡大防止の観点などから入場者数の制限、営業時間の変更及び休業となる場合あり
会場:心斎橋PARCO 9F イベントスペース(大阪市中央区心斎橋筋1-8-3)
料金:入場無料

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