少女が犯した罪を描く「映画の根本の部分は、障害と正常」

2020.12.2 20:46

かわいがっていた妹の死をどう受け止めるのか。知恵を演じる竹中涼乃(C)2019 Yosuke Takeuchi

(写真7枚)

「少女の感情だけは絶対コントロールしないようにしていました」

──監督、覚えてられるかどうか分からないけど、大阪アジアン映画祭でお会いしたときに、ひとつ疑問を呈しましたよね。妹が亡くなったのは観客は明らかに光雄のせいじゃないと分かるわけですが、姪っ子・知恵がついた「嘘」っていうのは、僕は光雄が「僕のせいにしな」と吹き込んだんだ、と解釈したんだけど、真相はどうなんだろうと。監督はそのとき、「それは違うんですけど」と。

その話はよく覚えてます。あれ、ミルクマンさん以外に言われたことはなかったんですよ。そのあとも1回も誰にも言われなかった。

──いや、今回改めて観ても、やっぱりそういう風に見えてしまうんですよね、僕は。

シナリオの段階では完全に、知恵は自発的に言ったっていうふうにしてました。その流れがあるから、のちに知恵が光雄に抱かれたときに言う「ごめんなさい」が繋がる。

ただここは難しい部分で、僕は知恵を演じてくれた竹中涼乃さんに、遊園地へ行くところまでしかシナリオを全部渡してなかったんですよ。

──あ~、そうなんですか!

彼女には状況説明だけで、「昨日はこういうことがあって、今日はこういうことがある」みたいな。「ここはこういう感情だから」とかは涼乃さんには絶対説明しないで、彼女がシナリオ通りにいくように役者さんたちで導いていく、ってことをやってたんですね。

そうなると、やっぱりシナリオ通りにいかない部分が出てくる(笑)。どうしても僕的にはこのセリフを言って欲しいんだけど、無理矢理言わせたくないというのもあって、「おじちゃんが落とした、ってセリフがあるけど、気持ち的に言いたくなかったら言わなくていいよ」って演出にしていました。

竹内洋介監督「最後のシーンはひまわりを一面に咲かせたかったが、最終的にはいい画が撮れました」と話す。関西での公開は「シネ・ヌーヴォ」(写真)からスタート

──でも、あそこで知恵があのセリフを言わなかったら話が進まないじゃないですか?

そうなんですよ、あそこは重要で。まぁちょっと『言わせた』ってところもあるかも知れないです。おじちゃんが彼女を守るために、救急車のなかでもしかしたら彼女と話をしてそういう事になったのかもしれない、って。

──あ、それはやっぱりちょっとあったんですね。

でもそれはなるべくキャメラ上では見せないようにはしたんですけど。でもバレる人にはバレるかも知れないな、とは思っていました。

──でも、たとえおじちゃんが「僕のせいにしろ」って言ったにしろ言わなかったにしろ、あまり変わりはないんじゃないかと。

そうですね。ただ、その後の「ごめんなさい」がやっぱ違和感くるんじゃないのかなと。

──でも、あの時点ですでに、知恵の証言によって光雄だけじゃなくて、親族すべてに多大な疑念と迷惑がかかっている。もちろん光雄をあそこまで追い詰めちゃったからには「ごめんなさい」って言葉はそれほど不思議じゃないなと思うんですよ。

じゃあよかったです。そこだけ結構心配しながら編集してたので。

──それに仰ってるほど涼乃ちゃんの演技がわざとらしくないもん。嘘言うところが。

確かに彼女の力ですね。彼女は上手いっていうか、当時は天才的な感じにみえました。反応がもう天才的なんですよ。オーディションの時からもう別格で、とくに泣きの演技がとんでもなかった。3人くらいに絞って最後に第一印象の彼女にしたんですけど。でも、泣きだけだと映画にならないじゃないですか。

──子役泣きっていうのがありますよね。上手すぎる臭さ、っていうのがやっぱ出ちゃうから。

彼女の性格的に、近いキャラだったんでしょうかね。彼女は頭良くて、ちょっと説明すれば理解してくれるんですよ。結局大人の役者さんでもそうだけど、理解力って重要だと思うんですよね。

そこをもうこの歳で分かってる感じはありました。ただ感情だけは絶対コントロールしないように彼女の感情に任せてましたね。

『種をまく人』

監督・脚本:竹内洋介
撮影監督:岸建太朗
出演:岸建太朗、竹中涼乃、足立智充、中島亜梨沙、ほか
配給:ヴィンセントフィルム

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本