2020年下半期に見逃していない? 観るべき洋画の評論家鼎談

モデル活動もおこなう主役のチュティモン・ジョンジャルーンスックジン。『ハッピー・オールド・イヤー』。(c) 2019 GDH 559 Co., Ltd.
新型コロナウイルス感染の影響で、公開が延期されていた映画がようやく公開されはじめた2020年の下半期。ただ外国映画は次々と2021年へと公開が延期されたり、なかには「Disney」のように劇場公開ではなく、専用サイトで配信のみとなるものも。
そこで、数々の映画メディアで活躍し、Lmaga.jpの映画ブレーンである評論家 ── 春岡勇二、ミルクマン斉藤、田辺ユウキの3人が、「ホントにおもしろかった映画はどれ?」をテーマに好き勝手に放言。2020年・下半期公開の外国映画からベスト3を厳選、そのほかにも見逃してたくない映画についても紹介。
文/田辺ユウキ
田辺「『透明人間』はモンスター映画かと思いきや、もはやアート映画」
田辺「下半期の外国語映画の話題作は、クリストファー・ノーラン監督『TENET/テネット』ですかね」
春岡「実は俺は中盤まで退屈しちゃったんだよ」
田辺「その中盤の、いわゆる『鏡』のような部屋のあたりからどんどんおもしろくなっていくんですけどね」
斉藤「いや、僕は最初からずっとおもしろかったんだけどね、ドラマとしておもしろいのかというと誤魔化しているところは結構ある。僕みたいなSFマニアからすると、どんな小説から影響を受けたのかがうっすら分かるのよ。やっぱり画にすると、なんか全部は納得できんな、ってなる」
田辺「日本文学、海外文学では今までもあったような話ですけど」
斉藤「うん、文学的ではあるよね。でも時間が退行する、交差するというのは映像ではやったことないような話なんだよ。だからそういう点ではすごく新しい。ノーランもおそらくSFマニアだろうし。あれを無理矢理にでも画にしちゃうのがすごいってこと。何回観ても分からないところもあるし、ノーランも分からないままにやっているところもありそう。SFの世界でワイドスクリーン・バロックっていわれてるジャンルがあるけど、とにかく設定が派手で、いろんなガジェットとかの装飾がかかっている。もっともらしい理論はあるんだけど、その実、無茶苦茶という(笑)」
田辺「各所で言及されているけど、ロバート・パティンソンの存在の意味とか、答えは出さないけど匂わせがいろいろある。仕掛けがうまいですね。主人公には名前がないこと、そして『俺がこの物語の主人公だ』と言っちゃうところなど」
斉藤「いわゆるスパイものの定石は踏んでるもんね。どれだけワケ分からんことしても(笑)」
春岡「俺としては分かる、分からないはどうでも良いことなんだけど、映像的にすごいと思いつつ、自分には合わんなあと。寝そうになってしまう映画ってあるじゃん。何回観てもさ。ダニエル・シュミット監督の『ラ・パロマ』(1974年)とか10回近く観ているけど必ず同じところで眠たくなる。アンドレイ・タルコフスキー監督の『ノスタルジア』(1983年)は蝋燭を持って温泉を行き来するところ。1番の見せ場だと分かっていながら。まあ、それが楽しいんだけどね」
斉藤「あと下半期といえば『透明人間』! 2020年のベスト格!!」
田辺「我々が良く知るモンスター映画かと思いきや、もはやアート映画。アートモンスター映画」
斉藤「ホントにそうなのよ」
田辺「カメラが何もないところを撮影して、あたかもそこに何かいると思わせる。何も映ってないことが実は一番怖いという」
春岡「透明人間だもん。いるんだよ、そこに(笑)」
斉藤「何もないところを撮るなんて、メジャー作品じゃ別の意味で怖いことなのに平気でやっちゃう。じゅうぶんコンセプチュアルでチャレンジングな表現をしている」

春岡「そういうところが良いんだよな。映画ってこういうこともやれるんだなって、改めて思ったよ、昔のSF、モンスター映画のリメイクかと思ったらああやって観せてくれて、楽しいじゃん」
田辺「部屋の構造やレイアウトも見事でした」
斉藤「あれはもはやヤバいレベルだよね。ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』と同じくらい図面を描きたくなる(笑)」
春岡「監督のデザイン力を感じさせる。超モダンで格好良く、そして冷たい。あの部屋は良かったよなぁ」
斉藤「全部計算して映画を作っている。ハリウッド映画にしては予算はあまりかかっていない気がするんだけど、それを逆手にとって実験精神でやっている。しかも画と音響で」
春岡「それが超B級の条件だよな、ホラーをリメイクするときのだから、予算は全然かかってないんだけど『すげぇじゃん』って」
田辺「マスコミ試写で観終わったあと、ミルクマンさんと僕で話していたじゃないですか。足元から湧き上がってくるような音だったから、試写室の音響システムが変わったんじゃないかって。それくらい音が良い」
斉藤「センサラウンドになったのかと思った(笑)。新解釈と新技術と新しい発想。『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(2017年)なんかとはレベルが全然違う。っていうかトム・クルーズは『透明人間』なんか観ると悔しがるんじゃないかな。彼はむしろそっち側の人だから」
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